バタフライ効果
『超能力は誰もが持っている。ただ本能がそれを拒絶しているだけだ』
何枚かの注意書きを読み終え便せんをめくると、その一文だけが書いてあった。
明日香はいよいよ本題かと息をのみ、その一文の書かれた便せんをめくった。そこに書かれていたものが、『予見能力の使用方法』というものだった。
わらしべ長者が手にした一本の藁が、やがて彼を大富豪にする。物語を知っている者は、主人公が裕福になることを知っているが、主人公はそうとは知らない。
この能力は言ってしまえばそういった類のものだった。相手になにか小さな、そうとは知られるはずのないきっかけを与えるとその人のその後の人生がどうなっていくのか、それが自分だけに分かるのだ。そのきっかけは文字通り『蝶のたった一度の羽ばたき』に過ぎなくても。そして、この能力の発現方法は至って簡単なものだった。
それはこの後に書いてある、使ってはいけない数多くの超能力も同様だった。
暗殺方法は至って簡単だった。まず、使ってはいけない超能力から一つ選び、それを伴侶に伝える事を想定する。そして、予見能力を発動させ、どのタイミングで伴侶に伝えれば、その話を鵜呑みにして使用してくれるのか、確実に息の根を止められるのか先読みする。この時、出来るだけその場で発動させず、自分のいないところで発動させられれば尚良い・・・
最後まで読み終えた明日香は、使ってはいけない超能力の中から五つをピックアップして、自らのノートに写した。それから予見能力を発動させ、どんなタイミングなら、どんな方法ならあの5人を殺せるのか、そのストーリーを追った。
何度か予見していくうちに、5人を一日で殺せるストーリーが見えてきた。そのきっかけは、夏休みの前日、教室に誰も居なくなった事を確認してから自らの机にこのノートを置いていくだけ。最後の一人が死ぬまでにはこのノートが処分される事も見えていた。
終業式までの我慢だ。そう思いながら明日香は母の寝室を後にした。
『もう少し、もう少しであいつらは‥‥‥』
自室に戻ると、窓際にとまっていた
ESP 井湧敬一 @kiritokeiichi
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