最終話 巻物(スクロール)はやめてくれっ!(後編)

 この1頁あたりの所要時間が5分未満なら、それはかなり読みやすい小説だと私は思います。例え、その所為で総頁数が3桁越えしようとも、です。

 携帯が高性能化した昨今、ブラウザで文章を表示するのは、大抵数秒で出来ます。ですから、駅で電車を待っている時間や、お昼休みにファミレスで料理が出てくるまでの時間、家に帰ってカップ麺や冷凍食品が出来上がるのを待つ時間に、TVドラマのCMが終わるのを待つ時間、等々、小さな隙間時間にさっと携帯を取り出して1頁ずつ読み進める事が出来るからです。正に文庫本の上位互換という感じがします。


 逆に1頁あたりに10分以上かかる場合は、ちょっと厳しい気がします。正直、現代人は忙しいです。メール、LINE、Twitter、ニュースサイト、動画サイト、スポーツ、TVドラマ、新作ゲーム……etc。小説に割ける時間はおのずと限られてきます。

 実際、10分~15分のまとまった時間があれば、ソシャゲを立ち上げてひとっ走り出来るレベルです。競合するライバルが多すぎて、かなりガッチリ心を掴まれたコアなファン以外は、(いつでも読めるからという理由で)後回しにする可能性が高いでしょう。

 例えるなら、文庫本が1分毎にセーブできる(栞を挟める)ノベルゲームだとしたら、こちらは10分毎にしかセーブ出来ないという事になります。折角、いつでもどこでも読めるのに、これでは手軽さが失われてしまいます。

 また、一度ブラウザを閉じてしまうと、続きを探すのも大変です。『ちょっと時間空いたから、あの読みかけだったページを最後まで読もうかな』と思って貰えても、何千文字もある文章の中から、小さな携帯の画面で上へ下へスクロールしながら目的の場所を探すのは、なかなかハードです。やっとこさ見つけて貰えても、その時には既に電車が来てたり、CMが終わってたりして、結局、続きを読んで貰えないかもしれません。


 実際問題、長期連載作品の後期あたりになると、この手の長文1頁現象が増えてくるんですよね……。最初の頃は2000字前後(文庫本3頁相当=所要時間3分以内)だったのに、慣れたのか面倒臭くなったのか、徐々に徐々に増えて行って、今では5000文字前後(文庫本8頁相当)とかいう状態に……。

『ソレ、文量的に2頁に分けても良かったよねっ!?』と声を大にして言いたくなります、はい。


 基本的にネット小説の類は素人が書いています。

 見に来る人も、それを理解したうえで見に来ています。

 ですから、多少拙かろうが、展開に目新しさが無かろうが、『このシーンが書きたい!』『この部分を伝えたい!』という、熱い想いさえあれば大丈夫です!

 きっと誰かが受け止めてくれます。

 

 なので、私から言いたい事は只一つ。


 巻物(スクロール)だけは止めてくれっ!

 そんなに一度に読まない(読めない)からっっっ!!


 といったところで、わたくし、灰塵の『小説の書き方(ただし、自己流)』、これにて完結。

 ここまでお付き合い下さった皆々様、本当にありがとうございました!

 また、どこかの企画等でお会いする機会がありましたら、宜しくお願いします。


 それでは、今回はこの辺で。


                          from 灰塵

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小説の書き方(ただし、自己流) 灰塵 @ashdust

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