ひよこ寮の住人達

メンバー全員がリビングに集まっている時、トオルがまたバカな事を言い出した。


「なぁユウちゃん、そろそろ次のステップに進んでもえぇんちゃう?」


「次のステップって?」


「舌入れたりとか」


「…何の話?」


「キスの話」


「…それで? 舌入れるとどうなるの?」


「どうて。そら、気持ちえぇんちゃう?」


「イメージ的にナメクジを口に入れる、みたいな?」


「いやいや、ユウちゃんそれはアカン。グロいわ」


「トオルがしたいって言ったんだろ」


「ワイのベロとナメクジ一緒にせんといてや~」


「トオルこそ、そういう話をみんながいる前でするのやめてくれる?」


「え、2人ん時がえぇ?」


「どっちかと言えば」


「せやけど部屋で2人っきりやとムラムラするやんか~」


「は!?」


トオルの言葉につい大きな声を出してしまった。


多分、最初から話は聞こえていたとは思うけど、オレの声でメンバーの視線がオレ達2人に集中する。


「小路先輩、顔が赤いですけど大丈夫ですか?」


心配して声をかけてくれた白玉に頷くだけの返事をしてから、隣にいるトオルを睨んだ。


そんなオレの顔を隠立が覗き込んで来る。


「しょうゆ、鮮度増してる」


「…」


「鮮度!!」


どう反応して良いかわからずにいるオレとは対照的に、根津先輩と家茶は楽しそうに笑いながら声を揃えた。


阿荘先輩がその2人の頭をポンポン叩く。


「からかうのはやめてやれ」


「はーい」


「ガキ扱いすんじゃねー!!」


素直に返事をした家茶とは違って、扱いが気に入らなかったらしい根津先輩は阿荘先輩の手を叩きながら怒っている。


その阿荘先輩と根津先輩の様子をジッと見ていた隠立が、今度は根津先輩の周りをウロウロし始めた。


…どういう状況なのか良くわからない。


それにしても最近はちょっとした事ですぐ赤くなっている気がする。


気を付けないといけない…と頬を触っていたら、里兎先輩と目が合った。


「小路くん、最近可愛くなったよね」


「…」


トオルに言われた時みたいに恥ずかしくなる訳じゃないけど、自分に当てはまらない言葉を言われると困る…。


オレが黙っていると、さっきから静かだったトオルがオレに近寄りながら口を開いた。


「里兎さん、ユウちゃんの事可愛ぇ言うてえぇんはワイだけやで」


またバカな事を…。


「トオルもそういう事は言わなくて良いから」


「せやけどワイはユウちゃんの彼…」


「口を閉じろ」


これ以上赤面する様な事を言われたくなくて、急いでトオルの唇を指でつまんだ。


「むぅ、む…」


それでもまだしゃべろうとするトオルに呆れる。


でもそんなトオルがおかしかったのか、他のメンバーは一斉に笑い出して、そして口々にしゃべり出した。



ひよこ寮の住人達は今日も賑やかだ。

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ひよこ寮の住人達 皆実 @minami26

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