PHASE3  BETTLE-(最終決戦の地へ)-

 俺に罪を着せる一方で味方につけ、ヤツの居所を探る為に利用したんだな。

ヤツは最初の取引相手に君を選んだ。しかし、ヤツはトンズラしたんだ。焦った君は付け焼き刃で罪を着せた俺を利用することにしたんだ。

 同機種の携帯を俺に持たせたのも、連中の目を欺く偽装工作ってとこだろう。

察するに連中が俺とのコインロッカーでのやり取りに君を任命しているあたり、上層部からよほどの信頼を勝ち得ているな。スパイとしての勤続年数も長そうだ。

 君は文字通り両組織という堅固な錠前をたやすく解除することが可能な『マスターキー』だったわけだ。

 彼女は微笑った。だが、その真意は推し量られた。

 なぜなら、その時彼女は息を引きとったのだから。胸から血を流して。

彼女の目がうったえかけていた。(ね?また会うって言ったでしょう?

 体躯があり、恰幅のよい男が崩れおちる彼女の肩口から姿を現した。


その瞬間、点と点が繋がり一つの像を結んだ。


「彼女が裏切り者であるとは今の今までわからなかった。ただ、私の愛する彼の彼女であることに私は嫉妬し、いや憎悪さえしていた。君は彼に似ている。無鉄砲で直情的なところが」

 同じ暗闇なのに今は判別できる。鬢が白髪がかっていたのではなく、光の照り返しだったことに。金髪碧眼のその中年男性は語を継いだ。

「君をあの場(おそらく、目覚めた時の取り調べ室のことだろう)で警察につきだしてもよかったのだ。ただ、私が愛する彼にあまりに似ていたのでそうはできなかった。ファイルを盗み出した彼に仲間がいることは薄々わかっていた。だが、本当に彼女が二重スパイだったとは。私は彼女をプライベートな感情では恨みこそすれ、業務上は部下として信頼していたのだよ。君の監視役にも置いていたぐらいに。私の組織は海外に根をはる外資系のトップ企業だ。少なくとも表向きにはな。裏では君がたどり着いた真実が企業の本質だ。だからこそ、この秘密は守らねばならん。私達は来るバランスが崩れそうになった時に情報を売り、世界に均等をもたらす存在なのだよ。」

「こんなに人の生命を奪っておいてもか」

「結果として君を泳がして正解だった。今、このタイミングで漏洩されると世界情勢、バランスが覆されるところだったんだ。正しきことは正しいタイミングで使うべきだ。いわば、正義感だな。私は幾多の生命を救うために、たった2人の犠牲を支払っただけた。英雄に祭り上げられてもおかしくない成績だよ」

「狂ってるぜ、アンタ」

「どうとでも言うがいい。どちらにせよ、君みたいな国家権力の駄犬には無力だ」

「覚えときな。駄犬だって、追い詰められれば主にも噛みつくんだぜ」

俺はゆっくりと銃把をにぎりしめる。

外人もとっさに構える。


 膠着状態が続く。

 

 俺の日常を返せ。

どちらともなく、シリンダーを廻す。





 「コレで終わりだぜ」

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