夜桜

火花

第1話

「続いてのニュースです。19○○年に起きた児童五人が殺害のち、畑に埋められていたという事件の容疑者として逮捕されていた中里亮太さんが、無実だったことが判明し、問題になっています。警察は……」

朝なんとなくつけたテレビ、やっていることで今まで以上に人を信じれなくなりそうだった。コーヒーとトーストを胃に納めつつ時間を確認する。

仕事の準備を終え、いざ出勤しようと思うと体がダルい、学校行くときに体が急に重くなるあれと同じだと思いたい。

「書類忘れちゃった」

外に出るなり大切な書類を忘れてしまっていた事に気付き慌てて家に戻り、書類を回収した。

「印鑑よし、記名よし、間違いなし!」

ちゃんと印鑑も押されてあるし名前も「夜月 莉桜」と間違えなく書いてある。忘れたらクビかも知れなかったので思い出して良かった。

勤務場所に向かう電車の中、私は今の自分がどうしてこうなったか整理するのが日課になっていた。

「夜月 莉桜 24歳 職業は看護師 顔は中の上 彼氏居ない歴=年齢 ヲタク 隣町の松崎総合病院に勤務し始めて一年と少しの新人 そして何故か陰湿なイタズラを受けている」

考えれば考えるほど悲しくなる。まぁ学生時代も教室の隅で本ばっかり読んでたしそういうタイプの人間なんだろう。そうこうしている間に駅に着き、徒歩6分程度の所にある松崎総合病院に行く。職員玄関から入り、今日も一日頑張ろうというところで…ドンッ

背中、額の順に痛みを感じた。

「あら夜月さん転んじゃって大丈夫~?」

「手ぇ貸してあげよっかぁ~?」

「ほんとマヌケねぇ~」

朝からイラつく。ほんとにイラつく。いつも陰湿なイタズラをしてくる三人組だ。名前は…忘れた というかどうでも良い。

必死に勉強して看護師になったは良いものの、こんなに古典的なイタズラをしてくるやつがまだ居たのかという思いだ。

いつもの制服に着替え、業務をしていると、医院長から呼び出しを食らった。多分書類についてだろうと思いつつ一応急いで向かう。


「失礼します。夜月莉桜です」

「どうぞ」

そんな短いやり取りで私は医院長室に迎えられる。正直書類提出なら普通に渡せば良いし呼び出す程でも無いのでとても緊張している。そんな中、医院長の松崎先生に書類を手渡す。

「うん、個別看護了承っと。これから大変かも知れないけど頑張ってね。」

個別看護ねぇ…個別看護…始めて聞いたわ!昨夜凄い眠くかったから適当に書いて内容も全然読んでなかったから初耳なんですけど!? まぁ呼んで無かったのは私が悪いとして、わかっているふりをしてやり過ごす事にした。

「それで、個別看護なんだけど…中里亮太さんって知ってるかな?」

「えっと…冤罪で捕まってた…」

「そうそう、その人の介護だよ。中々やってくれる人が居なくてね。かといって僕がやるわけにもいかなかったし君がやってくれて良かったよ。期間は一週間後の5.1からね。宜しく!」

「…はい」


なんかめんどくさそうな事になってしまった。医院長の話によれば休みは週二日、患者さんと相談して有給もとっていいらしい。そして5.1からは通常業務はやらず個別看護に専念する事、私が居ない時は他の人が担当する事等といろいろな事を言われた…が正直全部は覚えてない。看護師になって間もないがこれからが不安になってしまった。

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夜桜 火花 @tamamitune

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