異界の剣の武勇伝

@ikai_gaiden

序章 降臨

 人口九十億人が栄える、この地球星。

 ある時は戦争が起き、ある時は独裁が行われた。

 そんな地球星の一部分、日本では一人の少女が誕生した。

 彼女はすくすくと育ち、遂に高校生になり家を出た。

 彼女の名は、真柄陽菜。

 それから彼女はどうしたのだろう?両親は知る由もない。

 いや実は彼女…つまり私もどうしたかは知らないのだ。


 理由は、記憶を失っているから。


 気が付いたら此処、不思議な森の中にいた。

 実は私は森に行ったことがなく、このような風景は初めて見た。

 ゴソゴソと音が聞こえた。

 ゾクッっとするので振り向いてみた。

 その時、思わず私は呟いてしまった。


「なんだ…リスさんか」


 私の目線の先にはリスがいた。

 私は一つ、安心した。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 歩いていくにつれ、段々と思い出した気がする。

 確か私は富士山に登った気がする。

 何で登ったかと聞かれれば、少し不可解な点を思い浮かべるが基本的には説明がつく。

 私の友達、後呂萌音ちゃんは私を連れ回すのが好きだ。

 多分あの時も萌音ちゃんは私を連れ回しながら、富士山の山頂にまだ来てしまったのだ。

 だったら、何で来て決まったのだろう?

 わからないよ…。怖い。

 ちょっと思ってしまった。

 でも、そうとなると萌音ちゃんもこの辺りにいるということになる。


「萌音ちゃ~~~~~~~~ん」


 私は顔を赤くしながら萌音ちゃんを呼んだ。

 返事がない。どうしてだろう。


「彼女は、もっと早くに目覚めたのう」


 後ろから老人の声が聞こえた。

 私は振り向く。するとその先には背の高い老人が立っていた。

 結構な年をとっているだろうに腰を曲げてない、私はそこに驚いた。


「あなたは誰?」


 私は訊く。


「儂は『天界の古術師』。お主のマスターじゃよ」


 マスター

 私はいきなり驚いた。

 何?それ…。そう思ったのだ。


「そのことについては良かろう。それより、頼みがあるんじゃよ」


「…何?」


 私は訊いた。


「それは、あの屋敷で話すとしよう」


 「天界の古術士」が指した先には、古びた屋敷があった。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


「それで…何ですか?」


 私は落ち着いて訊く。

 茶が出され、客のようにこの屋敷は持てなしてくれた。

 すっかり私はご機嫌だった。

 しかし、次の瞬間私の機嫌が変わる。


「世界を…征服して欲しいんじゃ」


 え…?

 えええええええええええええええええええ!?

 私は驚く。


「…嫌です!」


 そして理由を聞く前に自然とその言葉が出た。

 少々自分だけど吃驚した。


「何故じゃ?」


 「天界の古術師」は訊く。


「私は…平和に暮らしたい。それだけで十分だからです」


 そう…静かに私は言った。

 すると「天界の古術師」は少し奇妙な顔つきをして私を見つめ始めた。


「どうしたの?ですか?」


 私が訊くと、「天界の古術士」が言った。


「その平和が一人の男によって壊されるのじゃよ」


 …?

 「天界の古術士」は続ける。


「つまり…世界が終わるんじゃ」


 …

 …

 …

 沈黙が流れた。

 意味が分からない。

 何を言ってるか…分かんない。

 アニメや映画じゃあるまいし…これは夢…かな?

 私は不信感を抱いた。

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