青い双葉

 迷いなく動くシャーペン、きれいな指先、口許までいって、光の速さでノートへと視線を戻す。もう一度おなじように──…なんて無理だった。二重でぱっちりしたが、こちらを見ていた。

 耐えきれずに、あちらこちらと目がいってしまう。見たいのに、はずかしい。


 ──ふふっ。


 なんて含み笑いが、炭酸みたいにシュワッと消えた。同い年なのに、バカにされたよな? そこそこ人が居る図書館。本をさがしに足音が聴こえる、ページをめくる音、パタンと閉じる。時計がゆっくりとときを進める。


 パタン。宿題が終わったらしく、トントンと鞄へ入れ始めた。


『家じゃ終わらないし、駅前の図書館で宿題しようかな』


『じゃあっ……俺も!』


 相手の一人言を追っかけて、偶然を作り出して、チャンスがあれば。


「そろそろ帰らないと。親うるさいし」


 いつでも最後は、ペンケースが残っている。出すわけでもなく、ペンがぶつかり合う。今が、チャンス? ずっと思っていた言葉を。ちゃんと言えてるかも、分からないけどっ……

 

 驚いてた。そして、笑った。


「だいぶ待ったかも」


「基本的にツンツンしてるし、もしかしたら鬱陶しいのかもって」


「やだ、言い訳」


 友達以上恋人未満だとか。大人の恋だとか。青春だとか。そんなの知らない。これが、僕らの距離。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

何だか物足りない日に、 糸花てと @te4-3

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ