せやけど愛は

「俺ら愛を伝えるために漫才やってるわけだけど、でもどうやって?」

「そうだよな。」ポーの問いにトキが納得して煩悶する。

「未だに覚えている愛された記憶ってある?」夜未が問いかけた。

「昔、ある娘にプリン作って貰ったことあるよ。」

「聞かせて聞かせて。」ポーが食い付いた。

「バレンタインの日に、その娘の家に上げてもらったんだ。彼女の部屋のベッドに座って、プリンを作ってくれるのを後ろから眺めていた。」

「俺も今思い出した。」ポーが挙手している。

「ポー恋愛担当大臣。」低い声で夜未が指名した。

「彼女は俺のために絵を描いてくれたの。」

「へえ、どんな?」

「彼女オリジナルのキャラクターなんだけど、それがハートを持ってる絵でね。赤い色鉛筆で塗ってあって、やさしい気持になったのを憶えてるよ。」

夜未とポーが、わずかに頬を染めている。

「でも愛って恋だけじゃないような。何処と無く愛のある雰囲気ってあるよな。」

「たとえばたとえば?」ポーが耳に手を当て、トキは夜未の方に体を向けて熱心に聴いている。

「んー。たとえば授業が終わったあとの部室の雰囲気とかかな。教室での疲れを部活で癒すようなムードが広がっていたり。」

「愛って一対一の恋愛ってだけじゃなくて、集団がそういう雰囲気を醸し出すこともあるんだ。」

「まだまだあるよ。自然に対する愛。環境と自分が繋がり合うこと。」

「愛し愛されればいいっていうことは分かってるけど、どうやって愛するかをわかっていかなくちゃあ。」

この言葉を境にみんな黙り込んだ。

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愛など残る @nipper

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