2話

イエイヌはノックの音で目が覚めた。

とてつもない空腹感。立ち上がることすら出来ない。


「開いてますので……入ってください」


扉を開けると、そこには見覚えのある顔があった。イエイヌは小さく威嚇をする。

見覚えのある少女はイエイヌにかけよった。


「すごく痩せてるじゃないか!私の分だけど、たべれるか?」


少女……アムールトラはジャパリまんを差し出す。それでも警戒を隠せないイエイヌを見て、アムールトラは悲しそうな顔をした。

虎としての耳がペタンと下がる。


「……やはり、信じてもらえないよな」


イエイヌはアムールトラの手を見る。

鎖もついておらず、フレンズとしての手になっていた。


「あなた……フレンズに?」


アムールトラはその言葉に下げていた耳をあげた。そして、イエイヌはアムールトラが持っていたジャパリまんを手に取る。

アムールトラの目に、軽く涙が浮かんだ。


「ありがとう。先程はごめんなさい」


イエイヌは久しぶりにジャパリまんを頬張った。なぜだか、彼女からもらったジャパリまんは、今までのジャパリまんより美味しく感じた。

イエイヌは美味しそうに少しずつジャパリまんを頬張っていく。

1つ食べ終えると、アムールトラはもうひとつを差し出した。


「いいんですか?」


「あんただからこそ、食べて欲しい。それよりもっと食べな」


「ありがとうございます!」


イエイヌは2つ目のジャパリまんを美味しそうに頬張った。

イエイヌがジャパリまんを美味しそうに食べているのを見て、アムールトラは微笑んでいた。


「……あんたに謝りたくて。

あんたのことを傷つけてしまった。

だから、あんたに提案があってきた」


イエイヌがジャパリまんを食べ終えると、アムールトラは真剣な顔で向き合った。

イエイヌも真剣な顔になる。


「ハカセやかばんさんに聞いた。

海の向こうに、ヒトがいるかもしれないって。よかったら、ヒトを探しに旅に出ないか?」


イエイヌは驚いた顔をした。


「ひとりじゃ無理です!行けません!」


「私も!一緒についていく!いや、行かせてくれ!」


アムールトラは頭を下げた。


自分の記憶に残っている、ヒトならばどうしただろうか。

むしろ、今こそ変わるべきではないだろうか。

ずっと待ち続けていた受け身だった自分から、ヒトを探しに行く自分に。


「……はい!アムールトラさん!よろしくお願いします!」





こうして、みんなから嫌われたアムールトラと、ひとりぼっちだったイエイヌ。

のけものだった2人のフレンズの旅が始まった。



この2人が素敵なコンビと言い合える仲になるのは、まだ先の話。

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のけものフレンズ 夜雨N @yosameN

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