のけものフレンズ
夜雨N
1話
瓦礫に包まれる中、少女は微笑んでいた。
少女の身体能力であれば、瓦礫を避けることもできたはずだが、あえて少女は動かなかった。
ようやく死ぬことが出来る。
これでもう、他のフレンズを傷つけることも無い。
少女には「フレンズとして」の意識も残っていた。しかし、体は「けものとして」の意識で動いていたため、自分の行動を止めることは出来なかった。
フレンズになることができなかった、所謂出来損ないの自分の人生はここで終止符を打たれる。
ドラマチックに誰かが助けてくれるなんて、他のフレンズを怖がらせてた自分にはそんなことは起きない。
気がかりは、あの犬のフレンズだ。自分の手で怪我させてしまった。心から謝りたいが、そんなこともできない。
少女……アムールトラは目を閉じた。
最後に、他のみんなが笑顔になりますように。
でも、ほんとうは。
だれかと友達になりたかった。
……
また別の少女の話。
少女は絵を見たあと、それを大切に閉まった。
少し、待つのに疲れてしまったようだ。
昔人間に聞いた、自分と似た者の話は最後はどうなったっけ。
結局ご主人様に会えず、死んでしまった。
あの仲間は10年待ったが、自分はそれ以上に待ち続けた。
思えば、自分は自分から幸せを手放してばっかりだ。
かばんと呼ばれた女性と出会った時には、ほかのフレンズに「人間はもう絶滅したかもしれない」と聞かされて、思わず飛び出してしまった。やっと見つけたフレンズではない人も自分から手放してしまった。
少女はその場に寝そべる。
ここのところ、ジャパリまんさえ食べる気力もない。腹は減っているが、何故か食べたくないと感じてしまうのだ。
少し目を閉じる。
たまには寝て待つのもよいのかもしれない。
果報は寝て待てとも言う。
少女……イエイヌの目は霞み出す。
人間の少女と出会ったあの日を思い出す。
綺麗な夕焼け、少女の笑顔、傷だらけになったこと、
あのビーストの姿。
もしかしたら、あの子も1人だったのだろうか。
なら、いつかは友達になれたかもしれない。自分が人間に固執しなければ。
「……ただいまって……誰かに言いたいなぁ……」
イエイヌは目に涙を浮かべながら、眠りに落ちた。
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