ただひとり、少年だけが戦い続けていた。(※ネタバレあり)

作品は絶対評価したいので、星の数は適当です。
※最終話まで読んだ感想です。


やったこともないゲームが、すごく好きなことがあります。ネット時代の忌み子みたいな奴だなと思ってくだされば結構です。

で、さる人のブログレビューを読んだことがきっかけで、『終末の過ごし方』というゲームが、やったこともないのにすごく好きなんです。

何だか冗談のように終末に向かうことが確定した世界で、最後の時を各々何かをやり遂げながら過ごしていくゲームらしいのですが、この小説を読んで、「こんな話なのかな」と思ったりしました。

こちらの物語では、やっぱり冗談のように、どこでいつの間にやっていたのかも知らない宇宙大戦に地球が負け、人類が星を追い出されることになったところから始まります。

一応、SFらしい異星人だか某クラークのオーバーロードだか分かりませんが、人類に生き残る術は用意してくれています。『銀河ヒッチハイク・ガイド』の問答無用ぶりよりかは良心的です。ただ、地球に残ることはあまり良い選択肢ではないぞという脅しは忘れない。

そんな中で、地球残留を決めた少女と、それを知った少年の話。主人公の少年は、こういった穏やかな終末ものの主人公らしく、どこかのんびりしていて、どころか感情に大きな欠落がある。避けようのない滅びを前に、二人が救われるのか、楽しみに読んでいきたいです。


※追記(ネタバレあり)

感情が無いと思われていた主人公が、実は感情を出すことを過度に恐れていることが分かる五話から、終末ものらしいキャラの内面世界が全面に出て行きます。

さらに八話。なんと少年が感情の暴発と共にループを繰り返す能力を持っており、感情を抑制し我慢することで惑星にエネルギーを溜め込むことができるという、星の意思を担う存在だったことが分かる。

物語が急転直下どころか、衛星軌道も超えて太陽系外に吹き飛んでしまうのではないかと思いましたが、最後のところで、当初のタイトルに見事な帰還を果たします。おかえり、はやぶさ。

SF中編らしいともいえる、豪快な筆運びです。読んで体感してください。

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