第42話 第一部完

 サンマルカ王国某所にて。


「そうか。《黒の魔女》の正体はアーガス王国の元第二王子、ヒツギ・フォン・アーガスだったのか。ヒツギ、柩……どこか、懐かしい響きだ。まるで記憶にないはずなのに、親しい誰かの姿を想起してしまう。もしや前世で何かあったか? ……なんてな」


 自嘲気味に笑う女性。珍しくなんとも言えない表情をしていた。


「もう《黒の魔女》ではない。奴は《十二界王》の一人、冠する名は《屍術王》です」

「そうだったな。我が副官白狼の凶刃カゲヒサ・カミイズミ」


 若い女性の隣には、四十半ばの老けた白髪をオールバックにした男が佇んでいた。

 180センチに届きそうな程の長身。限界まで引き絞られた体。歳を取っても、その肉体は衰えというものを知らない。


「それで、《極拳帝》ホンファ・ルー・ブリンク。あなたはどうするのですか?」


 背丈は百六十半ばの、『十八歳』の女性が口を開いた。


「まずはミッドヴァルトの西側、《不動王》ガルマ・バルバトスの討伐だな。《屍術王》は魔の森の東側を拠点としている。しばらく会う機会はないだろう」


 紅色の長髪。それを天辺で結った、ホンファのポニーテールが揺れた。


「だが、妙な確信がある。私はやがて《屍術王》と相見えることになるだろう」

「ほう、なぜか楽しそうですね」

「ああ。不思議なことにね。懐かしい感じがするんだ」

「気が合いますな。実は私も、『柩』という響きには感じるものがある」


 前世での、高森柩の師匠にして、唯一彼が愛した女、凰紅花フアン・ホンファ

 そして、高森柩の生に終止符を打った宿命の男、上泉景久かみいずみかげひさ


 二人は姿と年齢を変えて、アーガス王国の反対側。サンマルカ王国にて軍の最高階級である元帥と師団長を務め、さらにホンファは《七聖天帝》の一人、《極拳帝》として、カゲヒサはその副官としての地位を築いていた。


 ホンファの直感は正しく、近いうちに《極拳帝》と《屍術王》は拳を交えることになる。


 しかしそれは、ミッドヴァルトに戻る最中のヒツギ・ハイフォレストには、まだ知る由もないことであった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 第一部完。

 本作の更新はここで止まります。ご愛読いただきありがとうございました。代わりと言ってはなんですが、処女作をリメイクした新連載を始めました。タイトルは……

【優しくて可愛い最強のヤンデレ義姉に拾われた俺は、彼女に命を捧げる】です。

 はい、姉モノですね。

 時代は年上ヒロイン。はっきりわかんだね。昔から年上ヒロインが好きだった……


https://kakuyomu.jp/works/1177354054891715277


 何卒よろしくお願いいたします。

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固有魔術が《屍術》だったから国外追放されたので『魔王』に成る くろふゆ @96huyu

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