#2

ぶぅん、とそんな不快な音で目が覚めた。

「おや、起きたか」

そう耳元で囁かれて、私は少しびくついてしまう。

「先生」

と反射で呼んだ。どうも、胡座をかいた先生の懐で抱かれるように眠っていたらしい。それで今のは。

「いるんですね、虫」

「知ってるのか?」

「見たのは初めてです」

そう、マイクロドローンはあんな音を出さない。

グレアは、これも先生に寄りかかるように寝ていた。床から連続した板張りの僅かばかりのスペース。ベンチ程の幅のデッキに腰掛ける文化は確か「縁側」とか言ったか。先生は薄い布を羽織っていた。先刻まで、どうやら私はそれに包まれていたらしい。縁側の端には、煙を上げている陶器の動物が一匹。

「あれは?」

「香の一種だ。虫除けにな」

「効いてるんです?」

「気分が大事なんだ」

今夜の先生とは、会話にならなかった。こうも窓を開け放って、夜だと言うのにそんなに寒くもない。聞くと、この星はいつもそんな感じだとのこと。何を言ってるのだか。どこかで鳴いている虫の音を除くと辺りにはグレアの寝息だけが微かに聞こえていた。この星の息ざわり、先生の体温。また眠りに落ちるまでに考えられたのは、せいぜいそんなところだった。

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.nord @J_Michael

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