第11話 回復と変化

 夏帆なほは、その日の昼に目を覚ました。

 少しばかり混乱していたけど、夏騎おれが粗方の説明をしてとりあえず理解したみたい。

 ちなみに、学園の面々は夏帆なほが高熱で倒れた2日目で学園に戻っている。

 残っているのは、夏騎おれ秋斗あきと、それから秋斗の姉の秋穂あきほとその連れのミリアス。

 住職は、今回の事があったので遠分の間は泊めてくれると言ってもらえた。


 ☆☆☆


 高熱で倒れてから、夏帆わたしは夢を見た。

 幼い頃の記憶……。

 白いワンピースを着て白のフラットサンダルに麦わら帽子の女の子……それが夏帆わたし

 緑色の半袖に白色の半ズボンで、ビーチサンダルを履いている焼けた男の子……それが夏騎なつ

 幼い頃の私達は、京都の山奥にある大きな屋敷で住んでいた。

 あの頃は、庭で良く2人で遊んでいた。

 色々な事をしたし、時には生き物を観察していた。

 中庭にある池には鯉が気持ちよさそうに泳いでいて、目の前には竹薮が広がっていた。

 夏の山風が吹く度に、縁側にある風鈴が心地の良い音を奏でる。

 そんな環境で育った夏帆わたしは、とても自由奔放な所もあった。


夏帆なほちゃん、今日は川まで遊びに行こ?」


「うん! 行く!」


 その日、2人でいつもの様に川で遊んでいた。

 川では、川魚が気持ち良さそうに泳いでいて、とても冷たかった。

 そこで、夏帆わたしは足を滑らせて川に溺れてしまった。

 川の中は冷たく、綺麗だったけど苦しかった。

 そしたら、夏帆わたしの腕を掴んで夏騎なつが引き上げてくれた。


「な……ち……、な……ちゃん、なほちゃん!」


 ☆☆☆


 夏帆わたしは、飛び起きた。

 周りを見渡すと、誰もいなかった。


夏帆わたし……どのくらい寝てたんだろ』


 ぼーっと考えていると。


「おっ夏帆なほ、目が覚めたみたいだな」


「うん」


「それより、その右眼どうしたんだよ!?」


「えっ?」


夏騎なつは何を言ってるんだろ?』


 夏帆わたしはまだ、ぼーっとした状態で理解出来ないでいたけど……鏡を見ると一気にそれは目覚めた。


夏帆わたしの……右眼が黄金色になってる!?」


「な〜に大騒ぎしてんのよ!」


「あ、ユナちゃん! どういう事か説明して!」


 夏帆わたしはユナに説明を求めたのだけど……。


「それは、魔力と霊力の一部解放したからだ」


「貴方はだれ?」


「我が名は、そら……夏帆なほ様の式神でございます」


夏帆わたしの? 式神?」


 また、夏帆わたしが眠ってる間に色々と話が進み過ぎて、理解出来ないでいた。


「さて説明すると、魔力と霊力の一部解放したことによって生じたのがその右眼だ、そのお陰で今はどちらも安定しているだろ」


「元に戻らないの?」


「戻ることはない」


 衝撃的な一言に夏帆わたしの心は気づ付き、ショックを受けた。

 幼い頃から褒められていた事もあり、夏帆わたしにとっては自慢でもあったから。


夏帆なほ夏騎おれは良いと思うぞ、それで夏帆なほが変わるわけでもないし、綺麗なんだからな」


「……」


『な、な、なに言ってるの!? な、な、なつ!』


「これは、愛のこ・く・は・く〜!」


 ユナが夏騎なつを煽る。

 正直な話、夏帆わたしにはとっても恥ずかしくてそれどころじゃなかった。


夏騎なつってば、励ましてくれるのは嬉しいけど……あ、あ、愛の告白はちょっと……』


 夏帆わたしは、夏騎なつの愛の告白ですっかり右眼の事を忘れていた。

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終わり行く先に 南月 結 @shin16

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