第10話 高熱

 高熱で倒れて5日目……夏帆なほの高熱は下がることを知らず、かなり危険な所まで上がった。

 あと、1度でも超えたら死んでもおかしくない程に。

 それでも、何とかそれだけは免れた。

 とは言ってもまだ油断は出来ない状況である事には変わらない。

 夏騎おれは、万が一の事を考え……秋斗あきとに頼み、秋斗あきとの姉である現役陰陽医の秋穂あきほに連絡を取り非番中であったが来てもらった。

 そして偶然にも、日本こっちで研修を受けていた……ケイ・ミリアスと言う現役魔術医にも来てもらえることになった。


「初めまして大和 夏騎やまと なつきくん、私の名前はケイ・ミリアス、よろしくね」


「あ、はい! よろしくお願いします」


「それにしても、夏騎なつきくん大きくなったね〜」


秋穂あきほさん、お久しぶりです」


 夏騎おれは一通りの状況と夏帆なほの状態を説明した。


「どう? ミリアス」


「そうね、魔力自体はかなり安定してるから大丈夫だけど、恐らく暴走時間が長かった事もあって、危険な状態もあった事を推測すると……もしかすると私の手には負えないかもしれない」


 と言うのも、ミリアス曰く。


「本来魔力は決まった器の中に存在して、器が壊れると暴走するの……でも夏帆かのじょの場合、霊力も混在している訳だから普通の暴走よりも負荷が大きいのよ」


「つまり、魔力と霊力の両方を持って安定してるって事か?」


「そういう事かな」


夏帆なほちゃんの場合、陰陽で言うなら太極図みたいな霊力の器が右側にあるの」


「そして、左側に魔力の器が同様の形で存在するの」


 本来なら中央に霊力の器が存在する。

 なのにも関わらず、夏帆なほは違っていた。

 そのせいで、常にアンバランスな状態にあった。

 だから、時より魔法を使っていたのだと思う。


「「1つだけ解決策があるわ」」


「それは?」


「「器の形状と形を変えて、器を強化するの!」」


『仲良しか!ハモリすぎ』


 ただ、そうなると更に夏帆なほの負担になる上に失敗すれば……また。

 俺としては反対だった。

 だけど、そうも言ってられない状態である事は変わりなかった。


「「善は急げ! 今からやるわよ」」


秋斗あきと〜、お前の秋穂ねーさんってこんなせっかちだったか?」


「いや〜俺としても少しばかり直して欲しい所なんだよな〜」


 そんな会話をしていると、夏帆なほの傍に2人が現れた。


「全く、見てらんないわね! ね、そら


「全くだ」


「誰だ、お前ら!」


「全く、我が主を殺す気か」


「本当にそうよね〜」


 2人の少女と少年は夏騎おれ達に言ってきた。


「我が名は、そら


「私の名は、ユナよ」


 2人の少女と少年は名を名乗った。


「君たちはいったい……」


 秋斗あきとと同様に俺もそれは思っていた。

 もちろん、秋穂あきほやミリアスも同じ気持ちでいた。

 なんせ、突然現れたのだから。


「さて、そらやるわよ」


「御意」


 夏騎おれ達を放ったらかして魔術と呪術の詠唱を始めた。

 正直、聞いたことの無い魔術と呪術だった。


『こいつらは、一体なんなんだ』


 そして、黄金色の光に夏帆なほは包まれた。


「「我が主の力を解放せよ!」」


 光が広がり顔色の良くなった、夏帆なほの姿が現れた。


「「これで、終わりだ(ね)」」


「みて、秋穂あきほ!」


「うん、ミリアス見てるよ!」


 夏騎おれが見ても、誰がみても器が変化していた。

 そして、強化されていた。


「まるで、白と黒魔術の魔法陣が混じりあって器としてあるみたい!」


「私達、陰陽師には中心に太極図みたいな器があるわ!」


「それって、どう言うことだ……」


「確かに変だ、本来ならそんな事って」


 夏騎おれ達は困惑していた。


「そんな事はないわよ、それにその見方じゃないと夏帆なほ様が他の者に襲われるでしょ! 少しは頭を使ったらどうなの?」


「飽くまでも魔力と霊力の安定の為に一部を解放したに過ぎない」


 つまり、2人が言うにはまだ完全解放まではしてないって事なのか。


「全く、アンバランスにも程がある! どんな封印をしたらこんなになるんだ!」


「全くよ!」


 2人はぶつくさ文句を言っていた、その中で気になった名前が飛び出してきた。


「あの春真はるまって男、俺は信用に足らん男なのだがユナよ」


「そう? 春真はるま様は良い方よ」


「ちょ、ちょっと待て! 何故、夏騎おれの親父の名を知っているんだ?!」


 そう言うと、ユナと言う少女が答えた。


「それは、私達が春真はるま様のお傍で仕えていたからよ」


 その言葉にそこにいた夏騎おれは驚いた。

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