第1章第14話「ベニア村」

ガタン ガタン ガタン ガタン


「ふぁああ」


早朝まだ鶏も寝ているであろう時間、ベニア村へと向かう馬車に乗っているハルトは欠伸をしていた


この世界に来て馬車に乗るのは二度目で、倒れていたハルトを乗せてくれたゲイルのおっさんの馬車以来であった


膝の上に頭を置き眠っているハクの頭を撫でながら離れていく王都アーデンシアをみる


「お客さん、ベニア村始めてですかい?」


ベニア村出身だという御者が話しかけてきた


「えぇ、初めてですね。どんな村なんですか?」


「良い村でさ、長閑で景色も良い。海が近いので海鮮なんかも有名でさ。あと、特産品のメロも甘くて美味しいですよ?海沿いに市場があるので是非行ってみてくだせぇ」


「海鮮とメロですか?是非、食べてみたいですね」


海の幸など美味いに決まっている!それに、メロとはどんな食べ物なのだろうかメロン的な物なのか?百聞は一見にしかずとも言うし、村へと着いたら早速食べてみよう


「お客さんは観光ですかい?」


「いや、冒険者ギルドで依頼を受けたんだ村の洞窟調査っていう」


「あぁ!!あれですかい!それはなんとまあ有り難いことか、、村の若えもん達が怖がっててねぇ、、」


「実際どんな洞窟なんですか?」


「あぁ、村の西にある森を抜けたところに崖壁があるんですが、どうやらその崖壁が崩れたみたいでその壁の中にあった空間が出てきたみたいなんでさぁ、、」


「崖崩れはもちろん魔物がいるかも知れねぇって事でみんな怯えてるんでさぁ」


崖が崩れて出てきた洞窟か、雨が降って中の岩が溶け出し空間を作って

弱くなった部分が崩れたのであろうか


「崖崩れは怖いですね、村人達に怪我がないように最善を尽くしますね」


「ありがとうございやす。あ、見えてきましたベニア村てさ」


平原が続いていたが少しずつ畑が増え、朝の作業をしている人々が増えてきた。

そして、馬車の向かう先には朝日に照らされたベニア村があった

たしかに長閑で良い村だ、時間がゆっくりと進んでいる気がする


ハルト一行は馬車の停留所に降り、村の中央の広場へと向かい住人の人に尋ねる


「すみません、この村の村長さんはどこで会えますか?」


「村長なら、その道を入った所にある役所に居ま、、あ、でもまだ朝だから居ないかな、もう少ししたら来ると思うので村を見て行ってくれ。丁度、朝の漁が終わって市場で色々売ってる筈だからね」


市場と言えば馬車で聞いた海沿いにあるマルシェ的なものであろ

時間もあるみたいなので行ってみるか


「ありがとうございます行ってみますね」


「あいよ」


気さくな村人だ。この世界に来てこういう人ばかりなので、いざ怖い人に囲まれても反応できなさそうだ


「ハク、市場で朝ごはん見てみようか」


「わ!キュウちゃん朝ごはんだって!」


この御二方の食欲は相変わらずだ


市場は村を通る小さな川を渡った所にあるので橋を渡る

川といっても海と繋がる汽水域なので波の音が聞こえてくる


会社で働いている時は仕事漬けで休みも取れず海にくることなんてできなかった

一体この音を聞いたのは何年ぶりであろうか


市場に着くと色々なものが売っていた。野菜から魚介まで海のものだけではなくその日採れた食材や加工品、雑貨など品揃えは豊富だ


小さな村にしては賑わっており市場にも人が沢山いる。加工品売り場を歩いているといい匂いが漂ってきた。王都でもみた食べ物や海に近いこの村ならではの食べ物が並んでいる


ぐぅうう


「はると、、おなかひゅいた、、」


「はいはい」


「これ2ずつください」


最初に選んだのは、ホタテに似た貝柱の串焼きと海老の串焼きだ。


「まいどさん!レモの汁はかけるかい?」


「お願いします」


「あいよー!」


柑橘の汁をかけると、串を手渡してきた

まずは貝柱から一口食べる


「う、うまい!」

「おいしー!!」


「はっはっは!ありがとよ!」


シンプルに塩で味付けされており、柑橘の香りが良いアクセントとなっている

何より貝柱が肉厚でまるでステーキを食べているようなボリュームである


欲張りだが、二口目は貝柱ではなく海老に行ってみよう。

元の世界では見たことのない串だ一本の串に伊勢海老の尾の肉が丸々刺さっているような見た目だ。

これは贅沢である


あむ、、


「んんん!!!!!」


なんだこれは、、!!

言葉にならない、、、

何より魚介の中では海老が好きだという事も相まって、頭の中に情報の渦が起きる


貝柱同様肉厚でジューシーそして海老の味が口に広がり噛めば噛むほど味が出てくる!!

豪快にもこの大きな海老を串にしようとした最初の人間は天才、、、いや神なのかもしれない、、


「ハルトおかわり!」


ハクのやつめ分かっていやがる


「おじさん海老もう二本お願いします」


「気に入ってくれたかい!お嬢ちゃんの方は一本タダでいいぜ!」


「いいんですか!ありがとうございます」


キュウちゃんは周りのお店の人から餌付けされまくっていて、おば様キラーとかしている


青果の売り場に行くと、馬車のおじさんが言っていたメロが売っていた。やはりメロンの事だったようだ


「メロ!どうですか!美味しいですよー!」


一玉は食べれないのでカットされているものを購入する事にした。代金を渡しメロをうけとる


「まいど!」


メロは食べるとどこか懐かしい味がした。おばあちゃんの家でメロンが栽培されていた事を思い出す。あぁこの味だ


「みずみずしくて美味しいですね」


「なんたって、この村の特産品ですからね!お客さん王都からの人でしょ?たまに王都にも出荷してるんで!良かったら向こうでも買ってくださいね!」


「是非是非」


時間もいい頃合いになったので、食事を済ませて市場を後にし

当初の目的である村長の居る役場に行く事にした


「お腹いっぱいだね!」


「あぁ、美味しかったな」


キュウちゃんはおば様方に揉みくちゃにされ疲れたのかハクの腕の中で眠っている


村の広場を抜け道に入ると役場が見えてきた。中に入り受付の人に村長への面会をできるか聞く


「すみません、洞窟調査の依頼で来たんですけど。村長さんはいますか?」


「あ!その件ですね!少々お待ちください!」


受付の女性は小走りで部屋に入っていくと。

すぐに出てきて中へどうぞと案内をしてきた


部屋の中に入ると村長が近づいて来て、握手を求められる


「ご足労いただいたきありがとうございます冒険者様。私がこのベニア村の村長をさせていただいております。ハンクと申します。依頼の件でよろしかったですかな?」


「はい、ギルドより森の洞窟とその周りの調査の依頼を受けてきました」


依頼書を見せる


「確かに、できれば午後からすぐに行ってもらいたいのですが可能でしょうか?」


「構いませんが、魔物は確認されていないのでは?」


「依頼書ではそう記載されていますが、、先日に山に狩をしに行ったものが魔物がいるのを確認したと言うのです、、、」


「なるほど、、、それは早急に調査を行った方がよろしいですね」


まだ現段階では数は少ないのであろう、だが、早急に対処しなければ数が増えて対処しきれなくなる可能性もある


「それではお願いしてもよろしいでしょうか?」


「はい、もちろん。今から向かわせていただきます」


「ありがとうございます。森へは午後から一番近い北へと向かう門から出ていただいて。西へ向かってもらうと見えてきます」


「わかりました、では失礼します」


役所を後にし、北の門をぬけ森へと向かう。

道中、キュウちゃんに狩の練習をさせながら道を進んだ


「おぉ!えらいぞー!」


羽化してから数日だがもう大きくなり始めてるような印象をうける

あれだけ食べれば当然か、あと少ししたらハクの腕の中には居られなくなるであろう

そんなことを考えながら撫でてやる


しばらく道を進むと


「ん、見えてきたな」


視線の奥の方に崖が見える、目的地は近いようだ


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

平凡サラリーマンの異世界漂流記~社長、勝手ながら辞職して冒険者させていただきます。~ なおぴ @naopidayo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ