何が何でもオタク活動がしたいんです!
人権なんてないね
第1話 出会いを小瓶に詰めて
皆さんどうも初めまして私は、川端みのりと言います。突然なんですけど、みなさんはアニメやゲーム、漫画は好きですか?私はものすごく好きでいわゆるオタクってやつなんですよ。でも、そんな私のオタクライフが今とってもピンチなんです。実はですね、私のオタク活動資金が少なくなってきているんですよ……なんでかっていうと、就職してからは一人暮らしを始めて家賃や食費光熱費さらに携帯料金とか今までより出費がものすごく増えたからなんですよ。これじゃあせっかく推しのグッズが出ても買えないじゃないですか。だから、水筒使ったりお昼のお弁当を作ってきたりとかやったりしてるんですけどね。これでもまだ足りないんですよ、だからこうして暗くなるまでお仕事しているんですよ。
「なあ、今日はあそこ行こうぜ」
「おっいいな。決まり決まり」
そんな会話が聞こえ気になって声の方を見てみると、階段を降りていく二人の男性が見えた。
私は、少し足を止めて考えてみました。ここ最近は、節約のために外食なんてしていなかったし、今日はもう夕飯を作る気力もない。ここは思い切って、お店に入ってみることにしよう。いいかこれはご褒美なのだ。レッツ、大冒険!
「いらっしゃい!」
扉を開けた瞬間から、軽快なケルト音楽が聞こえてくる。そこは、普通の居酒屋とは違っていて例えるなら異世界系RPGの酒場という雰囲気だった。私は想像の斜め上を行き過ぎて本当に異世界にきてしまったのではとあっけに取られていると女性の店員さんがやってきた。
「初めてのお客さんだね。お一人様で?」
「は、はい」
パッと店内を見回すと、なかなかお客さんが入っているらしく何やら楽しそうな話し声が聞こえる。
「こちらのカウンター席へどうぞ」
「あ、ありがとうございます」
「それではごゆっくり〜」
そういうときっとサバサバした性格であろう女性店員は他のテーブルへと行ってしまった。私は、ちょっと冒険をしすぎたのではないのかと思いつつメニューに目を向ける。
「初めてでしたらこちらのシチューとパンのセットがおすすめですよ」
ふと顔を上げてみるとそこには天使がいた。いや、本当は天使ではないけれど私には天使に見えた。綺麗な黒髪を蝶のついた綺麗な髪ゴムでサイドにとめていて、白い肌にまるでガラス玉の綺麗な瞳。さらにさらにとっても優しい笑顔で私に話しかけてきている。
いけない、あまりにも美人だから言葉が出てこない。
「そ、そうなんですね。それじゃあ、そのお、おすすめで」
やっと、声が出たかと思えばぎこちなさすぎる。
もし私が男だったら、絶対に一目惚れしてる。
「はい、了解しました。シチューセットですね」
シチューセット入りまーすと彼女がいうと、エプロンがチラッと見えた。
ネームプレートのところに私の好きなリアル対戦ゲームのキャラが書いてあった。
うそ、こんな天使も私と同じオタク?いやいやそんなことは、でもネームプレートには確かにいる。
「あ……」
「どうかなさいましたか?」
しまった。すでに声が出てしまっていた。最近は、周りのいわゆる一軍女子からのアニオタ・ゲームオタクへの嫌悪がものすごいというのに。ああ普段は隠していたのに、仕方ない多分キャラがかっこいいけどよくは知らないっていう感じなんだろう。ああ、天使に嫌われる。でも聞かずにはいられない自分がいる。
「あ、あのもしかしてなんですけど。ネームのとこにあるキャラが、お、推しなんですか?あの、その、私もそのゲームが好きで」
よくやった私、これでミッションコンプリートだ。最後の方はちょっと声が小さくなっていたけどそんなことは関係ない。この天使が果たして私と同族なのかの方が重要なのだ。
その天使の方を見てみると、最初は目を丸くしていてけれどもしだいに目にキラキラと輝きがやってくる。ウワアア、め、目がああそんな綺麗な瞳で私を見ないで。期待しちゃうでしょ!
「実はそうなんですよ、結構やりこんでてあんましオタクに見えなーいとか言われるんですけどお客さんも好きなんですか?」
嘘だろ、おい。マジで言っているんですか天使様?こ、これは是非ともフレンドになりたい!めっちゃ欲を言えば一緒にスパコミとかに行きたい
「はい、私も好きなんですよ。結構やりこんでてついつい寝不足がちで。その、もしよければ推しとか聞いても?」
おお、ついに言ってしまった。天使との交流……。
「もちろんですよ!あ、えっと私の名前は
「綾音さんですね。私は、川端みのりって言います。こちらこそよろしくお願いします。」
おお、ついに天使に名前聞いちゃった。聞いちゃったよ。もう、名前からして天使じゃん。え、しんどい。
「そういえばみのりさん、どうしたんですか?なんとなくですが、どこか浮かない顔をしていたので」
え、今私天使に名前呼ばれた。あ、そっか今知り合ったんだよね。というか心配までされている?優しい。一軍女子といるとこんなことないもんなあ
「実は、ちょっと悩みがあって。あんまりおおっぴらにできることじゃあないんですよね。それで……」
「そのもし良かったら。私でよければ聞かせてください!そのオタク仲間っていうと厚かましいかもしれませんが」
今までこんなことなっかた。親にも若干白い目で見られながら推しを愛してきたし、学校でもそれを隠して生活してきた。もしかして、これが本当の仲間?そんなことを考えていたら自然と口が動いていた。
「実は、今の会社でオタクだって隠してるんですよ。最近はアニオタやゲーオタへの風評被害ってすごいじゃないですか。それだけど自分のカバンとかいつも身につけてるものは推しと一緒にいたいじゃないですか、けど周りから引かれたくない。これで悩んでてもう本当に参っちゃって、かといってもお金はそこまでかけれないのが現状で」
「それは大変ですね。ここは、いろんなオタクの人が集まるためにできていますからそういうこと言っても安心してくださいね。それと当店自慢のシチューセットです。あったかいうちにどうぞ」
コップに入ったレモン水が少し気持ちを落ち着かせてくれる。どうやらここのシチューはビーフシチューのようでもう香りが私の食欲を誘ってくる。
一口食べてみれば野菜がゴロゴロお肉は柔らかく、まさに手作りでしか出せない味。セットのフランスパンとの相性はもう最高でこれはやみつきになる
「そういえば、みのりさんのお悩みなんですけど。いい解決方法がありますよ」
私は思わず食べる手を止めて、綾音の顔を見ると彼女はうふふと微笑んでいた。
「そんな、本当にあるんですか?この悩みの解決方法が」
「低コストかつ女子力高めで推しを感じれればいいんですよね」
ニヤリと顔を近づけた彼女はそっと私に
「作っちゃえばいいんですよ。みのりさんだけの推しグッズを」
まるで、私の中で革命が起こったような気がした。そうだ、なければ生み出してしまえばいいのだ。だが、私にそんな技術はないし経験もない
「けれど、私は絵も描けないし材料ってどこから……」
彼女はその言葉を待ってましたとばかりに話を続ける
「そんなみのりさんにおすすめなのはハーバリウムです!実は百均で買えるもので作れちゃうんですよ」
うん?今ハーバリウムって言った?あのめっちゃ高いやつが作れてしまうだと
話を聞きながら、残り少ないスープをパンに浸してたいらげる
「へえ、私それ初めて聞きました。まさか作れるなんて知らなかったです」
そう言いつつ口元をふく。女子として、いや大人として当然だよね
「みのりさんは今度の日曜なんか空いていますか?ここ日曜はお休みなのでもし良かったら一緒にハーバリウム作りしませんか?」
嘘、天使からのお誘い。断れるわけないじゃん 返事はもちろん
「是非是非、ご一緒させてもらってもいいですか?」
こうして私は天使こと綾音さんと共通のSNSを通して連絡するようになった。
ちょっと話をしてみてわかったことがある。
綾音さんは私より年上だったこと、最初はお互いに敬語でさん呼びだったけれども綾音さんは私のことをみのりちゃんって呼んでくれるようになった。(私は相変わらず綾音さん呼びだけど)
綾音さんの得意なことは物を手作りをすること
かなりのオタクだということ(ここ重要)
ここは私の働くオフィス。今日も今日とてお仕事三昧で今は先輩の指導を受けながら頑張っています!
「あれ?みのりちゃん今日は機嫌いいね。なんかいいことあった?あ、私が当ててみせよっか。多分だけど、もしかして彼氏ができたとか?どう?当たってる?」
この私に優しく話しかけてくる先輩は、
「いえ、先輩には秘密です。というか、そんなに顔に出てました?」
「えーめっちゃ気になるやつじゃん。ふっふっふ私にはお見通しなんだよ」
そんなに顔に出ていたか、あの面倒な一軍女子たちに見せないようにしなければ
「まあちょっといいことがあったんです。それと先輩、印刷部数間違えてますよ」
「え、うそ。うわーやっちゃったかあ。ごめんねこんな情けない先輩で」
「そんなことないですよ。ちゃーんと頼りにしています、先輩」
まあこの先輩ちょっとうっかりさん、けれどもここの職場の数少ないオタク。先輩は私と違ってオープンなタイプ。マジリスペクトですわー
そんなこんなありまして、そんな優しい先輩とのお昼ですよ。まあ、私は相変わらずのお弁当。
「みのりちゃんっていつもえらいよね。私なんていっつもコンビニだもん」
「先輩、私がお弁当作ってる理由なんて一つですよ」
「え?マジで?何何?」
「簡単です。推しに貢ぐためのお金を使うためですよそれ以外にないです」
「あ〜なるほどね。私もしようかなそろそろライブの季節だし」
「ですよね〜。あ、先輩次イベ先輩の推しランボになってますよこりゃ大変そう」
「え、有給取んなきゃ。あーまた魔法のカード補充じゃん、あみのりちゃん次ガチャに復刻きてるよ。またチャレンジするの?」
「うわあマジっすか。先輩、魔法のカード一緒に買いに行きましょう」
「OK。日にちはまた後で連絡するね」
毎日のこんな昼休みが癒しなんですよ。いやあそれにしても、マジか出費あるなあ
それから、私は己の欲と戦いながら天使との約束の日曜日まで持ちこたえた。え?どうやったかって?秘密ですよ
「あ、みのりちゃーん!こっちですよ〜」
「あ、良かった。見当たらなくて、危うく迷子ですよ」
緊張する〜だって天使と一緒にお買い物だよ?あ、ちなみにあの日の後もお店には行ったけど。慣れないな……
「今日は、百均でお買い物してからお店の奥にちょっとスペースがあるんでそこで作っちゃいましょう!」
「お店にそんなスペースってありましたっけ?そんな感じには見えなかったんですけど」
「ちょっと奥の方にあってね。そのスペースでは普段はTRPGのセッションとかしてるんですよ」
「そうなんですね。初耳だ」
ふと、綾音さんの方を見るととてもウキウキしていた。まるで、遊園地に連れてってもらえる小さな子みたいだった。
道中では、お互いの推しについて語り合う。遠目から見れば、女子トークに見えるが内容は驚くほどのオタトークそしてこれがまた止まらないのである。みんなそうじゃない?
「さて、百均についたので早速材料を買いに行きましょう!」
「それはいいんですけど、どんなのを買うんですか?なんか結構難しそうだしあれって4000円とかするし材料もそのくらいするんじゃ」
あ、またこの待ってましたと言わんばかりの顔。この小悪魔フェイス、不思議と憎めないんだよなあ
「あれぼったくりですよねえ、あれはお花と瓶とオイルでできるんです。なんで今回は、瓶とお花を買って行きます!」
「い、意外すぎる。まあじゃなかったら百均になんかきませんよね。おそるべし百均」
まさかぼったくりの域までとは、でも自分で作れるのも意外だった。
「あ、お花何色にします?やっぱり推し色がいいですよね。それじゃあ青色ですかね」
「それじゃあ私は赤色にしようかなあ。結構あるんですね」
「そうなんです。造花だから劣化する心配なし!便利ですよね」
何このワクワク感まるでグッズのトレーディングしてる時みたい。色もそうだけど花の種類まで考えて選ぶ。これぞ創作の楽しさ……
「さて、ちょっと小さめのお花と大きめのお花を揃えたので、瓶を見に行きましょう!」
「小さめのと普通ので、何するんですか?」
「キーホルダーとデスク用ですね。みのりちゃん身近に置いておきたいって言ったじゃないですか。あとは金具を買って」
「なんか一気にプロって感じがするんですけど」
「意外に簡単ですよ。みのりちゃんもやったらわかりますって」
できるか不安になってきた。いや、天使がいうんだから大丈夫だって、な?
帰り道でも綾音さんは嬉しそうだった。やっぱり、こういうことするの初めてだったんだ。そうだよね、最近はツイッターとかアイコンをそういうのにしてるってだけで「きもちわるっ」だとか「ないわーwww」とか言われるし、ひどいのだと「氏ね」までもう言いたい放題。いまだに、あのチェックとかど近眼のメガネだと思われているし。そういった意味じゃ、かわいそうだよなあ私は不自由なさそうに見えてたけれども
お店に着くと、さすがは休日。しんと静まり返っていた
「どうぞ、ここがそのお部屋です。何かとちょうどいいお部屋でしょう?」
「お、お邪魔しまーす。わあ、意外にシンプルなんですね」
綾音は机に買ったものを置くと棚からガサゴソと何かを探す
「何探してるんですか?」
「ハーバリウムオイルです。小さいものだと500円、今回のは5Lのなんで4500円ですね。私も作るのが楽しくてつい大きめのをっと。ありましたありました」
ハーバリウムオイルなんてものがあるんだ。しかも以外にお手ごろ
「ちなみにオイルはなんでもいいんですよ。食用のでもできるんですけど色がついてるんで今回はこっちで作ります」
まじか。ハーバリウム意外にお得でびっくりこれなら確かに作れる
「えっと、とりあえず瓶に花を詰めればいいんですよね?」
「はい、その時にこの、デデン! 竹串 を使うと綺麗に仕上がります」
なるほど全方向に花を見せるためにか。準備いいなあっと忘れてはいけない。さらなる天使との友好関係を築くためにあれを持ってきたんだった
「じ、実はなんですけど今日ステッカー持ってきたんです。小さいから入るかなっって、それにあ、綾音さんの推しと私の推しが入るのでお揃いに……」
うっ。目がものすごくキラキラしてらっしゃる。眩しい
「い、いいんですか?是非是非、お揃いにしましょう!」
おお、良かった良かった喜んでもらえた。やっぱり天使には笑顔だよね
それから、30分ほどして
「では最後に、オイルを入れて行きましょう!」
「はい」
トプトプという音を立てて小さな小瓶に注がれていく。なんだかタイムカプセルを埋めてるときみたいなワクワク感があった。
「最後に竹串で空気を抜いて、蓋を締めれば 完成です!」
ついに、私も、手作りグッズを作ってしまった。こんなっことって現実なのか、ゆめなのか
「ついに、できた…私だけの推しグッズ」
「はい、しかもお揃いです!」
二人してできたものを見つめていた。私もできたものを見て意外に私できんじゃんなんて思ったりもした。
それから家に戻って、即仕事用のカバンにつけた。ハーバリウムなら何も引かれないでしょ。何よりこれは、世界でたったひとつのハーバリウムなんだから。やっぱりニヤニヤが止まらないね
そのとき私の人生のレールの方向が変わったような気がした。きっと彼女にあったからだろう。彼女、綾音さんにあったからだと思うだから今までしてこなっかたことをしている自分がいる。そのレールの先には何があるのか気になる私がいるのだった。あるお店から始まった私のハンドメイド生活はまだ始まったばかりなのであります!
何が何でもオタク活動がしたいんです! 人権なんてないね @chellymotto
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