ネタ出し方法その1【拡大法】:お題『切り札はフクロウ』

 さて、一日目のお題は『切り札はフクロウ』でした。

 鳥ではなく、フクロウであるという点に悩んだ人が多いんじゃないでしょうか?

 ですが、ネタ出しに限定すれば、フクロウではなくカモです。

 ……笑うところですよ?

 などと寒いギャグは脇に置いておきまして、固有名詞がお題の場合、ネタ出しは比較的簡単です。固有名詞がお題に来たらラッキーと思いましょう。

 では、具体的な方法を説明します。


ネタ出し方法その1【拡大法】

 名前は適当につけてますが、小説のネタ出し方法としてはポピュラーな方法です。

 具体名は伏せますが、小説の書き方に関する本を出している有名作家さんも、著書で同じ方法でネタ出しをしていました。

 やり方は極めてシンプル。キーワードを詳しく調べて、その単語ならでは特徴を並べ、キーワードを”拡大”させます。

 本当にそれだけでネタが出てくるの?という人のために、『切り札はフクロウ』というお題で実践してみましょう。


 フクロウというキーワードをネットで調べると、以下のような情報が転がっています。

・夜行性の鳥の代表格。

・「森の物知り博士」「森の哲学者」と呼ばれている。

・羽の音が極めて小さいため、「森の忍者」と称されることもある。

・羽の構造に消音効果があり、電車や風力発電の構造に応用されている。

・平たいお面のような顔で、頭は丸くて大きい。

・暗闇でも物が良く見えるように眼球が大きい。

・他の鳥は頭部の側面に目があるが、フクロウは頭部の前面に目がある。

・目は人間の10~100倍ほどの感度がある。

・狭い視野を補うために、首が上下左右によく回る。

・聴覚も優れており、仲間同士で対話による情報交換を行う。

・主な食糧は小型哺乳類、鳥類、両生類。

・鳴き声が「糊付け干せ」と聞こえるため、「フクロウの染物屋」という昔話ができた。

・日本と中国では、フクロウは母親を食べて成長すると考えられていたため、「不幸鳥」という異名がある。梟雄という単語も、親殺し→下剋上の例えから転じたもの。

・「不苦労」または「福老」に通じる名前であるため、縁起物とされることもある。

・ギリシャ神話では女神アテナの象徴として、知恵を司るとされる。

・アイヌ神話におけるフクロウは村の守り神として親しまれている。アイヌでのシマフクロウの呼び名はメナシチカフ。


 軽く調べただけでもこれだけのネタが出てきます。

 あとはこの中から使えると思ったものをピックアップして、それが話の中核になるようにプロットを組めば、お題達成となるでしょう。

 固有名詞がお題に来たらラッキーと書いたのは、そちらのほうが特徴を掴みやすいため、ネタの取捨選択がしやすいからです。

 次回で詳しくお話ししますが、『2番目』というお題だと、情報の範囲が広すぎてこの手は使えませんからね。


 私がこの方法で短編を書いた際は、「聴覚が優れており、仲間同士で対話による情報交換を行う」「アイヌでのシマフクロウの呼び名はメナシチカフ」というのをピックアップしました。

 さらによくよく調べてみると、人間でも慣れればフクロウの言葉を聞き分けることができるそうで、これを何かに活かせないかと考えたのです。

 そこからちょいちょいと組み合わせて書いた作品が以下のものになります。

「メナシチカフを見に行った」

https://kakuyomu.jp/works/1177354054888757737

 なお、見に行っていただければわかるとおり、評価はそこまで高くありません(2019/4/4時点で☆14、PV28)。

 ネタ出しがうまくいく=いい小説が書けるというわけではありませんので、その点はご了承ください。



 最後に、今回のお題で個人的に特に面白いと感じたものを二つご紹介します。

 ぜひ読みに行ってくださいね!


 【KAC1】夜の帳、闇の捕食者

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054888752968

 牧野 麻也さん


 ちょうど牧野さんが書いていらっしゃるエッセイに、恐れながら私の作品を紹介していただいているため、媚を売っているように見えるかもしれませんが贔屓目なしでオススメです。このエッセイを書こうと思った段階で紹介すると決めていました!

 スチームパンク風の廃退的な雰囲気でありながら、主要人物たちの明るいやりとりでバランスをとっていて読みやすい。

 そして、なによりお題消化の仕方が素晴らしかった。これはまさしく『切り札はフクロウ』と言え、他の鳥では代替不可能でしょう。

 これ以上のことは、ぜひ実際に読んで確認してみてください。



 僕たち梟にならないか

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054888743451

 坂井玲奈さん


 マザーグース的な恐怖を抱かせるホラーサスペンス。

 ――僕たち梟にならないか。という兄の問いかけから始まり、微笑ましい兄妹のやり取りが続く。

 彼が妹に問いかけた言葉の意味は……本編で。

 あと、この作品はおそらく今回紹介した拡大法でネタ出しを行ったのではないかと思われます。ぜひ確認してみてください。

 坂井さんは普段ギャグ小説を書いていらっしゃるようですが、それとはまったく異なる作風に驚かされるでしょう。



 今回はここまで。……うん、やっぱり実績もないのに、こういうこと書くのは思った以上に恥ずかしい!

 心が折れてなければ、残り9種類の方法も書いていきます。

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