第54話 流れ星

上目づかいで上を見る秀太。  

星が瞬き、暗くなろうとしている空が見えた。


チュイーーーン・・・ という異音はまだ聞こえている。



『同志ヘイロン、艦隊の様子が変です。標的点到着が遅すぎます。』


「心配には及びませんよ。 今度のミサイルは弾頭にファイアービーンズを四つ仕込んであります。 奴らは既に爆心地の範囲内に入って来ているも同然。大海烏が前回の時のようにミサイルを破壊したとしても・・・全滅は避けられないでしょう。」

と、ほくそ笑む男ヘイロン。



「マズい事になった・・・」

「提督、何があったんですか?」

「複数の衛星から同じ信号をキャッチしたと連絡があった。」

「・・・それはつまり・・・」

「どの衛星から撃ってくるか、特定できなくなったという事だ。」



チュイーーン・・・ という異音が止んだ。

固唾を飲む秀太。  海図を表示している画面を睨む少女。



ヘイロンの見ているPCの画面。

どうやらカウントダウンしているらしく、刻一刻とゼロに近付いて来ている。

「再見・・・は、ないな。 お別れだ。」


そして、〝0〟になった瞬間・・・


はるか上空で、一際光り輝く星が現れたように見えた。


数秒後、周囲一帯は晴れ渡っていたにもかかわらず、至近距離で落雷したような

雷鳴が艦隊にまでとどろき渡ったのだった。



『第4番衛星からの信号、途絶。 浮上沈没船と大海烏の状況に変化無し。』

「・・・・・・何だと? 何があった!?」

『現在調査中です。』

苛立ちを隠し切れない、ヘイロンと呼ばれる男。


『第5番衛星からの映像が届きました。』


黒い画像に不鮮明なひとつの光の点。 矢印と№4の表示。

次の瞬間、眩しい光でいっぱいになる画面。 そして、砂嵐画像。


『これより、副主席のお言葉があり・・・』

以後、ザーー・・・ 

という、電波をキャッチできないでいるラジオのような音が続いていた。


何かを察したのか、青ざめるヘイロンと呼ばれる男。



今ひとつ実感が湧いてこなかった。

戦車や軍艦の大砲に付き物の、砲撃によるトルクリアクション。

その凄まじい振動が部屋中に響き渡る・・・そう思い込んでいた秀太。


「ねぇ、本当に撃ったの?」


          ・ほあんかん を うっちまった・


「・・・・・・」


やはり、こういうのは受け流すのが正解なんだろう・・・ と、思う事にした。



北太平洋第七艦隊と〝浮上した沈没船〟は互いの距離を保ったまま。

夜は更けて、星々が瞬く。


しばらくして、夜空にビーム砲のような光線が数多く目撃された。








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