生きがい
ハイマン
「止めてくれてありがとう。いや、私は君のような人に止めてもらいたかったんだ」
「もう二度と自殺なんて馬鹿なことしないでください」
「実はね、今回が初めてじゃないんだ。以前にもこのビルの屋上から身を投げたことがある」
「どうしてですか、死んだら何も残りませんよ?」
「ああ、今では心からそう思うよ。あの時助けてくれた人が、私に生きる意味を与えてくれた」
「どういう意味ですか?」
「私は飛び降りた。目まぐるしく流れていくビルの壁面を見ながら『やっと死ねるんだ』と感慨にふけっていた。だが即死には至らなくてね、偶然通りがかった紳士が応急処置と通報をしてくれた」
「じゃあ、その人は命の恩人だ」
「そうだね。彼も、目が覚めた私に君と同じようなことを言ってくれたよ。『死んだら終わりだぞ』ってね」
「でも、そんなことがあったならどうしてまた……」
「『死んだら終わり』彼はそのことを分かっていたんだ。
義憤に駆られたよ。私は自分の人生を終わらせようと思って身を投げた。それなのに彼がそれを許してくれなかった。
死にたがっている人間を無理やり生かすなんて、こんな非道い人間がこの世にいるのかと。
……私は思ったよ。あのような人間をのさばらせていてはいけない、って。だからこうしてあの男のようなお節介焼きを炙り出しているのさ。それが、今の私の生きがいだよ」
生きがい ハイマン @highman
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