抜き打ちテスト
5月。内田くんが仲間に加わり、私たちは今日も宗四郎宅で勉強会をしていた。
テスト後ではないが、内田くんのためにも暇なときに集まることにしたのだ。
「っていうか何でいつも俺の家?」
「あんたの家金持ちで広いからよ」
「お前んちだって家でかいだろ」
「・・・あんたそんなに女子の部屋に入りたい訳?」
「そ、そんなんじゃねえよ」
怪しいな。
隣で内田くんがぷるぷる震えていた。
・・・笑うな!
内田くんは地頭が良いようで、学校に行き始めてから、一気に今の勉強に追い付いてきていた。
・・・文系に関しては私よりも出来る。憎たらしい。
「そろそろ抜き打ちテスト来るかな?」
「ああ、そうかもね。でも、焦らなくて大丈夫よ。年に二回あるんだから」
「そうだね」
「そんなこと言ってられませんよ!」
急に内田くんが立ち上がった。
「年に二回しかないんですよ?先生どもに結果見せてやらないと、また舐められます」
「「・・・はあ」」
「僕はやりますよ。二人も、甘い考えは捨ててください」
「「はい」」
内田くんからの思わぬ説教があったあと、勉強会は終わった。
・・・ここは内田くんの言う通りにした方がいいかも知れないな。
そこから私たちは、今までの復習や予習をもっとしたり、勉強方法が書いてある本を買ったりして、力をつけることにした。
「見てろよ、先生」
宗四郎が小さく呟いたのを、私は聞き逃さなかった。
「・・・あんた、強くなったね」
私も思わず呟いた。聞かれてなかったらいいな。調子に乗るから。
そして――1ヶ月後
抜き打ちテスト当日
「みなさん、今日は抜き打ちテストです。準備してください」
「エエー!?!?」
遂にこの日か・・・うん、準備は十分にしてきた。きっと大丈夫だ。
・・・う、やばい。緊張してきた。
「では、始め!」
テストが始まった。どうしよう。私は緊張に弱いのだ。めったに緊張しないのに、どうして今日?
どうしようどうしようどうしようどうしよう
もう頭が回らない。心臓がうるさい。
周りの人のペンの音が聞こえる。何でこんなに出来るの?
・・・落ち着こう。まずは漢字だ。
うえきばち?どうだっけ。
え?つえ、けんま、そうざい?
全部分からない・・・!
そうやってテストは終わった。
「終わった・・・」
「珍しいな。理花がそんなになるの」
「うるさい」
「俺は割とできたかな」
「・・・へえ、結果が楽しみだね」
「う・・・歩はできたのか?」
「・・・分かりません。でも、最善は尽くしました」
「そうか」
「まあ、抜き打ちテストは二回もあるんですから」
「前と言ってること違うよ」
「・・・すみません」
「まだ結果出てないし、いま残念がっても仕方ないぞ」
「そうね」
そして結果発表の日。
理系→86%
文系→32%
・・・私は撃沈だった。
「お前理系も下がってるじゃん」
「・・・悪かったね。宗四郎は?」
「俺めっちゃよかったぜ」
文系→90%
理系→36%
「どこが?」
「え?俺、前理系20%代だったから」
「・・・はあ」
そこに内田くんがやって来た。
「二人とも、ありがとうございます!お陰で・・・」
私たちの空気を察したのだろう。
「テストどうだった?」
重い空気の中、宗四郎が尋ねる。
「僕は・・・」
文系→81%
理系→87%
うわー、負けた。
緊張していたとはいえ、それも実力だ。
やっぱり悔しいな。
そう思うと、涙が出てきた。
「どうした?!」
「・・・やっぱり・・・私には無理なんだよ・・・もう・・・」
「理花。お前、そんなに簡単に諦めるやつだったか?」
「・・・え?」
「それだったら俺、お前のこと見損なうぞ?」
「・・・わけないじゃん」
「え?」
「諦めるわけないじゃん、ばか」
「・・・そうか。お前、強くなったな」
・・・聞かれてたのか、前の。
その後内田くんは理系コースで飛び級し、勉強会にはたまに来る感じになった。
・・・はあ、羨ましいわ。
子どもの教育向上推進法<リケジョとブケダンの話> 千代田 晴夢 @kiminiiihi
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