ひっきーくん
――ひっきーくん
そう呼ばれる人がいる。
朝ごはんのとき、いつも見ているニュースが始まった。
――ニュースをお伝えします。
調査で、満65歳以上の高齢者が国全体の5割を越えたことが分かりました。
こんなに進んでるのか、高齢化。
そのせいで私のおじいちゃんは70歳だが、まだスーツを着て元気に働いている。
定年が75歳になったのだ。
大変な時代になったものだなあ、とお父さんが言っていた。・・・もう、他人事なんだから。
学校へ行くと、何故かクラス中がざわついていた。
「どうしたの?」
宗四郎に聞いてみる。
「ひっきーくんが久しぶりに学校に来たんだって」
「・・・どうして?」
「さあ。学校が恋しくなったんじゃね?」
「へえ」
ひっきーくんとは、そのあだ名の通り引きこもりの少年、内田歩だ。
一応同じクラス。
その少年が珍しく学校に来たらしい。
・・・理由がとても気になる。
みんなざわついている割に、本人に話しかけたりはしない。
だから彼が今日学校に来た理由は誰にも分からなかった。
しかし昼休み。私がいつも通り六法全書の本を読んでいると、後ろから肩を叩かれた。
振り返ると、そこにいたのは宗四郎と・・・ひっきーくんだった。
「・・・何?」
「いやー、なんかさ、ひっきーくんが話したいことがあるって」
宗四郎は頭をかく。
ひっきーくんはぺこりと頭を下げた。
うーん。なんか周りから視線を感じる。
「・・・いいけど」
屋上に来た。
――また屋上か。まあ、そこ以外話せるとこないけど。
「・・・で、話したいことって?」
「そんな問い詰めるようなこと言うなって」
「言ってないわ」
ひっきーくんは大きく息を吸い込んで言った。
「僕を仲間にしてください!」
「「・・・へ?」」
「実は先日、ネットであなたがたが先生に対抗していたことを知ったんです」
「ネット」
「はい。先生のツイートを見て誰だろうと思って調べたら、あなたたちだったので」
先生・・・見損なったわ。もっと。
「どうして俺たちの仲間になんてなりたいんだ?」
宗四郎が尋ねる。
「僕に、夢が出来たからです。・・・でも今の教育では、ひきこもりの僕のことなんか救済してくれませんし、しろともいいません。
前のテストも受けることが出来ず、先生からも見放されました。
でも僕は、これから巻き返して、なってみたいんです。なりたいものに。
先生には頼らずに」
その後も熱弁が続いた。
「・・・本当にやるんだな?」
「はい、もう決めました」
「んじゃまずは、『ひっきーくん』を卒業して学校に来ることだな。そして前の教科書で勉強して今の授業に追いつけ。大変だぞ」
「分かってます」
「目指すのは理系か?文系か?」
「理系です」
「なら分からないことは全部理花に聞け」
「・・・私文系コース行くんだけど」
「でも理系得意科目だろ?」
「あんた理系コースでしょ」
ひと悶着あったが、私たちはひ・・・内田くんを仲間に入れることにした。
――その後クラスで、三角関係を噂されることになったのは言うまでもない。
二ヵ月後・・・内田くんはもう学校生活になれたようで、宗四郎と親しく話していた。三人とも好きなコースに入ることはでき、なんとか付いていっている状況だ。相変わらず先生とは仲が悪いけれど。
そして、ついにそのときがやってきた。――第一回抜き打ちテストである。
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