第113話 魔王、勇者になる

 デスタの長い旅は終わった。だが、失ったもの多かった。



デスタ「終わったよ、フェイン……私達の勝ちだ」



 デスタは倒れている幼きフェインに別れを告げると、あてもなく森の奥へ向かって歩いた。   

 しばらく森の中を彷徨っていると、デスタの前に女神アリシアが現れた。



デスタ「お前は!?女神か…?確かゼニス吸収されたはず……」


アリシア「はい、魔王ゼニスは滅びました。だから復活できたのです」


デスタ「そうか……私はこれからどうなる?」


アリシア「その話は元の時代に戻ってからにしましょう」


デスタ「そんな事が出来るのか……ってあんたの力でこの時代に来たんだったな」



 こうして、復活した女神の力で二人は元の時代へ帰ってきたのだった。

 到着するや否や飛びついてくるピノとカナを優しく抱きしめるデスタ。



カナ「うわあああん!!ほんっとに心配したんだからね!」


ピノ「ぐすん、姉御なら大丈夫だっていったじゃんカナ姉」


デスタ「……心配かけたな」



 仲間達からたっぷり歓迎されたデスタ。そして、死んでいたと思われた女神の復活に歓喜する天界の住人達。

 アリシアは壊された宮殿の時を戻し復元すると、デスタ達の傷を回復した。その影響でしデスタ達は喜んだ。



ローズ「おお、流石女神様だ……死者も復活させるとは」


アリシア「ここ数時間以内に死んだ者に限りますがね……」


ラッシュ「女神さん一つ訊きたいだが、あんたの力でフェインを復活させる事は出来ないのか?」


アリシア「二人の魂は一つとなり彼の肉体も消え去ってしまいました。もう私にも戻す事は出来ません、申し訳ない」


カナ「そんな……フェインとはもう会えないの?」



 暗い空気になり沈黙する一同。フェインが死んだという事実を強く実感する。そんな沈黙を破ったのはデスタだった。



デスタ「転生だ……転生ならフェインを復活させる事が出来るんじゃないか?」


アリシア「ですが転生には彼の魂が必要なのです」


デスタ「そうか、それなら私の中からフェインの魂を切り離せば用意できるぞ」



 そう言ってデスタは両手を合わせ意識を集中した。両手から薄く光が漏れ、デスタの髪色が黒一色に戻った。

 そして、デスタの手にはフェインの魂が握られていた。



デスタ「これでフェインは転生出来るんだな?」


アリシア「はい、これで転生できますよ」


カナ「へー、厄災王の力って応用きくのね」



 デスタ達はフェインの魂をアリシアに託し、地上へ帰還した。魔王が討たれた事はすぐに世界中に広まり、世界に平和が戻った。

 それから、3ヶ月の時が流れた。デスタはソヨカゼ村近辺の森で一人静かに暮らしていた。

 そして、今日は久しぶりにピノとカナが遊びに来るので、デスタは食材集めに森を散策していたのだった。



デスタ「よし、ドラゴン松茸はこれだけ集めれば十分だろう。そろそろ家に戻るとするか」



 かごいっぱいのドラゴン松茸を背負い、デスタが歩き始めて数歩、木の陰から見知らぬ少年がこちらを覗いているのに気が付いた。

 歳はピノと同じ位だろうか。どこか懐かしい雰囲気だ。デスタは森で一人遊びは危険だと注意しようと少年に近づいた。すると、少年はニカッと笑みを浮かべると涙を流した。



少年「よう、久しぶりだな……デスタ」


デスタ「おかしな小僧だな、どこかで会ったか?」


少年「まだ気付かないか?ま、無理もないか……大分見た目も変わっちまったからなぁ」


デスタ「ま、まさか……フェイン!フェインなのか!?」


少年フェイン「おうよ!女神様の力で俺も転生したみたいだ」



 思わぬ再会に喜ぶデスタ。ひとまず二人はデスタの家に戻ると、後からやって来たピノ達と久々の再会を楽しんだ。

 こうして、かつて魔界の王だった者が勇者として世界を救った話は伝説として後世に語り継がれたのだった……………………………完

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魔王、勇者になる タイヨウ @taiyou12345

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