最終話

 今日も彼が来てくれた。

 付き合っている訳でもないのに、いつも来てくれる物好きな彼が。


 今日は少し調子がよかったから、思い切って桜を見に行こうと誘ってみた。

 少し渋るような様子だったけど、いいよと言ってくれた。

 柄にもなく、勇気を振り絞って良かったな。


 私は彼が好きだ。

 彼が私のことをどう思っているのか知りたい。


 明日こそ、告白しよう。




 前のページよりも文字は汚く、線は震えている。その上には、黒く滲んだシミが点々と出来ていた。


 日記を握る手に力が入る。一つ、二つ、と別のシミが次々と増えていった。


「なに死んでんだよ、まだ死なないって言ったじゃないか」


 堪えきれず、音にならない文字が喉を通り過ぎていく。



 ああ、そうか。


 昨日はエイプリールフールだったな。

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四月の空 suiu @keno2856

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