彼女との生活
"咲…ちゃんはどこに住んでいるの?"
僕は勇気を出してそう聞いた。
咲はか弱いでも確かに肌色の手で指さして言った。
"あそこ…"
指さした先にはボロボロの家があった。
人が住めるレベルではないような感じの。
でも、彼女があそこに住んでいると言った以上は何かあそこにあるのだろう。
勇気を出して1歩踏み出した。
おどろおどろしい雰囲気の家だ。
大丈夫、大丈夫。これが、ボクが普通になるための手段なのだから。
咲ちゃんに案内されながら部屋へ入った。
はっ!
入ったボクは固まった。
そこには、息を呑む程の大量の本が積まれていた。
彼女はそんなボクには構わないように本を粗雑に扱い、場所を作った。
"ここ…どうぞ?"
彼女の肌色の手が指した先はモノクロの床。
やっぱり、色は消えている。
ボクは咲ちゃんに聞きたい事が沢山あった。
"ねぇ、セカイから色が消えたの知ってる?"
"うん"
"なんで、咲ちゃんの色は消えてないの"
"あのね…"
そう言ったまま、黙ってしまった。
手持ち無沙汰になったボクは辺りを見て、1冊の本を手に取った。
『感情の失くしかた』
固まった。
まさに、今の状況じゃないか。
ボクの感情はもう表現出来なくて…
死んだようで…
気になって他の本をも手に取ってみた。
『喜怒哀楽なんている?』
そして、多分、核心である本を見た。
『感情と色』
まるで、今の咲ちゃんみたいだと、感じた。
"ねぇ、なんでこんな本ばっかなの?"
"…。"
言わなかった。
ページを開いてみた。
なんか、よく分からない図と言語が書いてあった。
その中にメモが挟まっていた。
魔法陣のような模様。
そうやって、無言で本を漁っているうちに咲ちゃんが動いた。
"お兄ちゃん。聞いてくれる?私のこと。"
ボクが頷くのを待って彼女は話始めた。
"あのね…。ずっとおじいちゃんと過ごしてきたの。でも死んじゃって。寂しくておじいちゃんの本を読んでたの、そしたら感情の無くし方って出てきて、
感情が無くなれば、寂しくないかなって思ってつい、試したの、ダメって分かってるけど。どうしても試してみたくて…。そしたら、イロが消えて。どうしたらいいの?わかんなくなって今は感情が欲しくてたまんないの! 助けて…。"
今までの無口が嘘のように彼女は話した。
途中で泣きながら。
"じゃあさ、感情取り戻してみない?"
まずは、嬉しいから。
君の感情はボクが戻す。
心の中で誓った。
色を奪う華よ。 優姫(ゆめ) @gomatan
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