色を奪う華よ。

優姫(ゆめ)

色華(しきか)

ある日、世界から色が消えた。


全てが白と黒に覆われて、まるで昔の写真のなかに迷い込んだようだった。


だけど、そんな世界で唯一色を残しているものがあった。


それは…花だった。


赤、青、緑、黄色、ピンク、紫…


人々は花を大事にするようになった。


自分が忘れてしまう色がそこにある。

花さえ見ていれば、自分は正常でいられる。


そう考えて、より世界は花に熱中しだした。





色が消えてボク、代田 黎は戸惑いを隠せなかった。


何故なら、ボクは画家。


あまり、売れてはいないが。


それでも生活、そして仕事の中で人よりも色を使う。


ボクの絵は、色で感情を表していた。


なにか特定のものを描くのでは無く、その一瞬の感情や記憶を色で残すのだ。


色がなければ、絵は描けない。


ボクの仕事は、無くなってしまう。


だから、世界には色に戻って欲しかった。


何をしても。


けど…きっとそれだけじゃない。


仕事なんて言い訳だ。


ただ、ボクは怖かったんだ。


このまま色が分からなくなって白と黒が当たり前になって。


色を忘れてしまうのが。


色はボクの感情だから。


感情があれば人だから。


色を忘れる。それはつまり人じゃなくなることだ。


だからボクは怖い。


怖くて仕方がない。


そんななか、ボクは1人の少女に出会った。


その少女は色がついていた。


彼女と出会った時の衝撃を!


なんてことだと思った。


今まで、色があるのは花だけだったから。


彼女は花に埋もれていた。


あぁ、なぜ彼女と出会ったのか説明しなくてはいけないね。


ボクは新たな色を求めて旅にでた。


蓄えはあまりなかったけど、どうせ仕事のなんて出来ないんだ。


世界中の花を見たいと思った。


まず手始めに日本中をまわった。


そのなかである、森に入っていった。


木は花ではないのでシロクロだ。


だが、そのなかでポツポツと咲いている紅い花が綺麗で、思わず入って行ってしまったのだ。


しまった。迷ってしまった。と気づいたのは随分進んでからだった。


戻ろうにもシマウマみたいに森中に広がるシロクロは、ボクの感覚を狂わせた。


それでも、歩き続ければどうにかなると信じて歩き続けた。


むしろ、歩かなくては行けないのかと思った。


何か駆られてボクは歩いた。


ここから運命だったのかもしれない。


そこからはあっという間だった。


森の奥にカラフルな花畑があった。


ボクは久しくなかった、色に全身を包まれる感じがして嬉しかった。


ゆっくりと色の海に身を沈めると、伸ばした手の先になにか違和感があった。


なんだろうと思いながら見てみるとそこには、カラフルな少女がいた。


それが、彼女との出会いだ。


まず、ボクは話して見ることにした。


そうすれば、きっと彼女が色をつけている理由が分かるだろう。


"ねぇねぇ、君?"と恐る恐る声をかけてみると。


こちらに聞こえるか、聞こえないかの、ギリギリの声で答えた。


"はい…"


"君の名前は何?"


"咲。"


全ての言葉がか弱かった。


こうして不思議に出会った彼女との生活が始まったのだ。

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