届かない手紙

くれない れん

二度と話すことのない君へ

前略


君は元気にしていると思っていた。

そして私を覚えていたということに驚きを隠せなかった。


君は、数十年も昔のこどものころに、私をいじめていた中の一人だった。

そして君は20年前に一人で勝手に逝ってしまったんだってね。

私はつい数週間前に知ったよ。


逝く前に君は

「あいつはずっとこんな思いしてたんだな」

「あいつはすげーよ」

「どんな思いをさせられても毎日ちゃんと学校に来てたもんな」

と言葉を遺したんだって聞いたよ。


君は、きっと私と同じような思いを経験してしまったんだね。

私はね、こどものころ「私をいじめてる人がいなくなたったら絶対ざまーみろって笑ってしまうんだろうな」と思ってたんだよね。

それがさ。

笑っちゃうことに、君が逝ったと聞いた時私は泣いてしまったんだよ。

信じられる?

「何で逝ったんだよ」って泣いちゃったんだよね。


本当に私をすげーって思ってくれてたんなら。

そんな「あいつすげーよ」なんて言わずにさ、私に言ってくれたら良かったのに。

「お前、あの時どうやって時間をやり過ごしてたんだよ」って聞いてくれたら良かったのに。

まぁ、いい顔はしなかったと思うけどとりあえず答えはしたよ。


連絡先知らなかったけど。

それでも親に聞くとか、あったでしょうに。


私はさ。

いつか大人になったときにあの時の人に会ったら

「私今超幸せなんだけど」って、鼻でふふんって笑ってやろうって思ってたんだ。

それなのに逝ったら、それ、できないじゃん。

それくらいの仕返しもさせてくれないなんて、そこんとこどうなのよ?

それくらいさせてくれたっていいのに。

何、これ。まだあのころのいじめが続いてんの?


辛かったこどものころよりも

突然一人で逝かれたほうが何倍もきつい。

君を愛した人ならなおさらだ。


文句の続きは私がそっちに逝って覚えてたらまた言う。

とりあえず次は一人で勝手に逝くとか卑怯なことはしないでよね。


かしこ


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

届かない手紙 くれない れん @kurenai-ren

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る