第2話

 豪華客船のVIP室で、「本が欲しいの。特に歴史書かな」とカタリィ・ノヴェルは言った。

 カタリは、サイ十七世の娘だった。識者候補者たちに、歴史の狡知を学んでほしいと願っていた。

 それが、最終的に大戦争を回避する手立てになる、と。

 「私たち、権力者の娘で、似た者同士ね」とバーグさんは言った。「これからも友達として、お付き合いしてくれません?」

 「こっちこそ」

 握手をしようとしたその瞬間、一番騎士がバーグさんを襲ってきた。

 サイ十七世は、カタリの交渉の目論見までは知らなかった。

 ただ、おそらく、サイ十七世から一番騎士には「カタリに近づく者は直ちに斬れ」と指示が下りていたのだろう。

 もちろん、俺も即座にバーグさんの守りに入った。

 「いい太刀筋だが、実践向きじゃあないな」と一番騎士がエラそうに語る。

 「そうかよ!」

 ストリートで身につけた無手勝手流に切り換えると、存分に効いた。

 だが。

 このままでは、いずれは――。


 「止めッ!!!」


 カタリが叫んだ。

 友情万歳。助かった……。


 そして、これが後から振り返り、「カタリとバーグさんの協力による、戦争回避への道のりの確実な第一歩だった」「最強コンビの出会いだった」と語られるのだった。


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シンプルトーク 花るんるん @hiroP

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