カタリとバーグさんとトリさんと

turtle

第1話

「また落ちた。。」

 kameko1はカクヨム3周年記念選手権6日目結果発表を見てPCのスクリーン画面にっ向かって肩を落とす。作品を書き始めたのは、学生時代の演劇部で脚本を書いた事がきっかけではあったが、社会人になってからずっと遠ざかっており、ここ4年ほどぼちぼち再開した。その上作品数も多くない。このイベントをきっかけに文章を書く習慣をつけるためだから、結果は気にしない、、はずだった。

 人間とは欲深いものだ。最初は締め切りまで書き上げただけでうれしかったが、徐々に星マーク、ハートマーク、レビューも欲しがる。仲間内で切磋琢磨しようと考えたら流石はカクヨム、既に自主企画という機能がついていた。

 まずは礼儀として自分の作品を批評してくれる人の作品を見た。愕然とした。制作済みの作品数が圧倒的に多い。数倍、下手すると数十倍だ。そして星マークのついている作品は、、、面白い!こんな発想もあるのか、ああ、こういう表現も、、、。こんな作品に交じって、私が何をかけというのだろう。気が付くと何度もため息をしていた。

 その上最後のお題は『カタリ』or『バーグさん』だあ?40過ぎの独身女性にキャラものはつらい。

 気を取り直して『カタリ』のプロフィールを見ると、

~トリから左目に授かった能力「詠目(ヨメ)」で人々の心の中に封印されている物語を見通し、一篇の小説にして、その物語を必要としている人のもとに届けるのが仕事。~

 、、、私の物語を必要としている人なんているんだろうか。心の中に封印されている物語は遠い昔の夢。日々の生活ですり減らし、人生の澱で曇ってしまった。

 次に首の凝りをほぐしながらバーグさんのプロフィールを読む。

~カクヨム内の作家のサポートや応援・支援を行うために生み出されたお手伝いAIのリンドバーグ。作家のヤル気向上を狙って作られ、その可愛さやひたむきに作家を支えてくれる姿勢が高評価を得て、カクヨム内の作家人口増加に繋がる働きをする。~

 私は伸びをして叫ぶ。そんなAIがいるなら配布してくれ!。こんな子なら私だって娘に欲しい、とはいえ育てる甲斐性はない、いやこの子がいれば仕事頑張れ、、私ははっと正気に戻った。草食男子が増えたのは2次元が充実しすぎているからだ、だからわたしみたいなのが売れ残るんだ、悟りとも八つ当たりともつかない結論に達した。

 白湯を飲みながら画面に向かう。生きていくのはしんどい。だからみんな物語を綴るんだ。書くことで心の毒をを吐き出す、架空の世界で幸せになる、そのことを繰り返しているうちに自身の生きる姿勢を確認する。

 どのような形態であれ、文章を書く事で、物事を深く考えようになる。そこから周囲の人の言葉でなく行動から気持ちを理解するようになる。世の中の出来事を表面上のトピックスだけでなく個々の事象を深く掘り下げ地下に繋がる水脈を見つけられるようになる。

 いつの間にか寝落ちしていたようだ。朝日に目を細めると、窓から丸っこいトリさんが飛び立っていくのが見えた。


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