伝説の姉妹

DDT

第1話

町で評判の可愛い姉妹がいました。

双子に見えるけど、ひとつ違いの年子。

お姉さんの名前はまみ、妹の名前はむめといいました。


姉に続いて妹も小学校にあがって、初めて迎えた夏休み。

ふたりは今日も手をつないで、町はずれの給水塔がある丘まででかけていきました。

給水塔のまわりには、公園というより空き地といったほうがいいようなぽっかり開けた場所があって、道端の花を摘んだり宝物を埋めたり、姉妹にとっては小さいころからなじんだ大切な場所でした。


この広大なニュータウンには、ふたりが生まれたころに家を買って引っ越してきました。

そのためお父さんもお母さんもローンをかかえて忙しく働いていました。

周囲には世話を頼める親類も、おじいちゃんおばあちゃんもいなかったので、ふたりは自分たちだけで過ごし、自由に世界を広げていったのです。

夏休みも終わりに近くなった日、姉妹はでかけたきり夜になっても帰ってきません。

捜索の甲斐もなく、そのまま30年が経ちました。


姉妹がいなくなった給水塔下の空き地には、やがて小さな祠がつくられました。

そうして都市伝説となったのです。

その姿をさまざまに二次創作した絵が描かれ、ネット上に流布しては消えていきました。

ふたりのイラストに必ず描きこまれるのは、桃。

にこやかにそれぞれひとつづつ、桃を掲げているのがお約束です。

それが「まみ、むめ、もも」というダジャレからきていることもだんだん忘れられていきましたが、萌えであることに変わりはなかったのでした。


(了)

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伝説の姉妹 DDT @D_D_T

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