遅かった男 【ホラー短編集】

人が苦手な少年

ボクは、ほかの人とおはなしをするのが苦手だ。会うのも。

でも、機械はすき。ほら、機械って字も書けるよ。

機械はなんでも、すき。いちばんは、時計かな？　うん、チクタクチクタクって、バネや歯車がいっしょうけんめい動いているでしょ？

パソコンとかもすきだけど、ぶんかいしてもあまり動くところがないから、つまんない。うん、バラバラにすると、いろんなことが分かってたのしいよ。

いちど、目覚まし時計をバラバラにしたら、おかあさんにすっごい怒られた。ちゃんと元に戻せるのに。

だから、おかあさんに見つからないように、一回バラバラにしたら、また組み立てているの。え？　むずかしくないよ、ちゃんとやりかたを覚えてるもん。

でもねぇ、おかあさんは「ともだちをつくりなさい」って言うの。

人間のともだちより、機械の方がいっしょにいてたのしいのに。人間のともだちじゃないとダメって言うの。

でね、この間、テレビで言っていたの。「人間も機械と同じ」って。血がオイルで、脳みそがコンピューター！　すごく精密な機械なんだって。知ってた？

だから、ボクね、たしかめてみることにしたの。

「やめなさい」っておかあさんは言ったけど、人間のともだちを作れって言ったの、お母さんじゃない？　人間が機械なら、ともだちも作れると思うんだよね。

でね、バラバラにしてみたの。ぶんかいっていうんだよ、知ってた？

ドライバーは使いにくかったから、ナイフでね、こうやって……うん、こんな感じでね。そうそう、おかあさんも大きな声を出してたっけ。だから、タオルで口をふさいだの。静かにしてーって。

ほら、ちゃんとオイルがこぼれても汚さないように、ビニールのシートも敷いてあるでしょ？　だから大丈夫。ちゃんときれいにぶんかいするから。あぁ、あんまり動かないでよ。失敗しちゃうじゃないか。おかあさんの時には、それで失敗為て元に戻せなかったんだ。

だいじょうぶ。たくさん練習したから。今度はうまくいくはずだよ。