本編においては、「ルートム記」こそ白眉です。
音楽一家に育ち、フルートの演奏に行き詰まり、自分を劣等生と思いこんだケントはいつしか異世界に紛れ込みます。そこで出会うのは、音楽家のフーオ先生、浮浪児のハック。暮らしの中で世話になるハックのため、ついにケントは音楽に本気になり始める。そして、フーオ先生のコンサートで演奏することを宣言するが……。
現実世界での息詰まる思いを、ファンタジー世界で困難を越えることで乗り越えようとする王道の展開ですが、作者のキャラクターを愛しても甘やかしたりはしない姿勢により、努力を余儀なくされ、それにより成長していく姿が鮮明に描かれます。
青春群像ものの傑作といえる短編集。あなたはどの物語を気に入るでしょうか。
朱ノ助くんが、農業は学問もないとできないと、寺子屋へ行きたがったのですが、家では、寺子屋に出してやりたくても銭が要るのでは出してやれない切ない心情がお父さんからよく伝わって来ました。
また、食べ物を表現するのがとても上手で、竹の子をいただくまでのお話には、私もお腹が空きました。
それから、米茄子の所では、自身の追体験もできました。
小説に挑むもいい評価が貰えずに悩む青年が、大雲先輩とリンさんと出会って、成長する物語もいい所が沢山あります。
先輩のおおらかさと明るく優しいリンさんと、作者様の描く畑や空の様子がとても美しいことが青春の心模様のようです。
そんな先輩に大変なことがありました。
私は、大雲先輩のお父さんを優しいと思いました。
羨ましいです。
大変な道のりがあったと思います。
辛かったことは乗り越えて、いいことも沢山あったと思います。
皆のがんばりがどのようだったのかは、お楽しみにしていてください。
是非、ご一読ください。