第6話 シェイドは精霊



*○*○*3年と数ヶ月か前*○*○*



昔、ジャックから聞いたタロウの体の話によるとタロウが元々持っていた魔力の性質ではなく、タロウの魂の入った器の体、元最強竜騎兵の魔力の性質が元から精霊魔法、幽霊魔法だったため、使えたというわけだった。だが全盛期のように魔法は使えないが、体に残った銃の腕は衰えず、見事に獲物を外すことなく定めた時間も極めて少なくし、捕らえることができた。そして体の年齢が12の頃、ある寒い冬の日に一度だけ村近くの平原で一度だけ魔法を使えるか試してみたが、精霊魔法は使えたのだが幽霊魔法は使えなかった。


しかもその精霊魔法を使った時に黒の服を着た何やら小さい羽の生えた幼い男子の妖精のようなものが現れた。幼い体のタロウは精神年齢的17歳だ。子供みたいに「わあーー!!すごーい!!」とか「えーーー!!何それーー!!」みたいな反応するわけでもなく、少し驚いた表情を作りながらその妖精のようなものをつついた。するとその妖精は腕を組んで足でタロウの手の先を蹴飛ばした。



『貴様、失礼なことをするな!!この俺様が誰だかわかってるのか、小僧!!』


『いやこう見えて5年くらい多く生きてるからね。しかもそっちの方が子供に見えるんですけども。』


苦笑いしながら幼いタロウは答えるとその妖精は仁王立のような形を作りながらふん、と息を吐いて答えた。



『子供というな!!こう見えても1000はもう超えてるわ!!そして俺様は闇の精霊、シェイド様だぞ。………まさか知らないのか!?』


『え………、だれですか?てか1000って3桁くらい間違えてるんじゃない?』



ドヤ顔で答えたシェイドはタロウの微妙な反応に叫んで感情を体と声で怒りを表していた。するとジャックがそのシェイドにしっかりとした反応を取る。



"お、シェイドか。懐かしいなあ。ヴァルキリーは元気か?"


『ん!?その声……、まさかジャックか!?お前どうして何年もこっちに連絡してくれなかったんだよ!!ヴァルキリーお前が死んだ、死んだって言って病んでたぞ!!』


"うお、ごめんな。シェイドの方から俺は生きてるって伝えておいてくれ。"



何やらシェイドのはジャックの声が聞こえるらしく、二人で懐かしみを帯びた声で和気藹々と話していた。そこに出てきた名前であろう"ヴァルキリー"と言う名前が気になった。シェイドと言う名前の妖精の名前は知らないが、ヴァルキリーは確か「戦場をかけ走る戦乙女」と言う二つ名で覚えており、タロウの記憶では確か勇気の精霊と言われていた気がする。そう考えるとシェイドも精霊のはずだ、とそこまで考えが追いつくと何故ジャックがその精霊たちと知り合いなのかが気になった。二人が何か話していて笑い出すと、その間でジャック自身に聞いた。


『ねえ、ジャック。何でジャックはシェイドのことを知ってるの?』


するとジャックが我に返ったようにピクリと動くと何か焦りだしたような感情がタロウに染み込み、その後すぐに平常心という気持ちが上書きされた。



"っあー………、まあ昔ちょっと知り合ってね。俺も昔は体を持った人間だったんだよ。ヴァルキリーってのは昔の知り合いでね。よく話してたんだ。"


『え!?ジャック、もしかして話してないのか!?おまえの体のこと。』



シェイドが驚いて体を固まらせていると、ジャックがゆっくりと息を吸って何か覚悟したかのように答えた。


"……そうだ、まだ話してない。だがあと3年と半年、その時、俺は戻るから。ヴァルキリーに、その時はよろしくって加えて伝えておいてくれ。"


するとシェイドはそのジャックの声色に何か気づいたみたいで動揺を顔ににじませながら一度頷いた。するとそのシェイドがいきなりタロウの方へと向き、むすーっとした声で話し出した。


『そんじゃあ、お前は一応、この俺様と契約しておくか。』


そう言われるとシェイドが人差し指を出し、黒い靄が線のような形になるとタロウの手の甲をそれでなぞった。すると血が出てくる。そしてシェイドはタロウの血をぺろりと舐めると今度はシェイド自信が自分の皮膚を黒い靄でなぞり、血を出してからタロウに舐めさせた。

タロウとシェイドが光りだし、周りに黒い靄が竜巻のように二人を囲み、シェイドがタロウの顔の前で手をかざし、呪文のような言葉を淡々と呟きながらゆっくりとまぶたを下ろしていった。


『汝、竜騎士の体を持って異世界のものの魂を維持し、我がシェイドは闇の精霊としてタロウ・ミヤザワと契約したることなかり。我が主として我が力を使いたまえ。この時より、タロウ・ミヤザワを精霊使いとする。』


最後の言葉に目を見開かせると、シェイドは周りに立ち込めていた黒い靄を自らの手に集め、それをタロウの胸にドンっと押し返された。すると何か力が溢れ混んでくる。左鎖骨あたりに何かの紋のようなものが浮きできててきた。それを見るとタロウが驚いた目で叫び出した。



『え!?僕なんかと契約していいの!?』


『まあ、契約しておかないといけないしな。ジャックが戻った時その方が便利だし。』


"ああその時はよろしくな、タロウ、シェイド。"





*○*○*○*○*○*




そして今、精霊魔法はその契約をした後、シェイドを何回か呼んで話し相手をしたりとかしていた。だがその時言っていたジャックの言葉が本当ならば来月にジャックは"戻る"というわけだ。しかも来月というのは丁度2週間後だ。実際、今もタロウの隣にいる。きっとそれはジャックの代わりと言えるだろう。だが皆には見えていないと思われる。そしてそのシェイドもこの戦いを見ていた。


『なんだよあいつら。魔法の使い方がなってねえじゃねえか。』


お得意のようにブスッとした顔で見ているのは水魔法使いのセシールと闇魔法使いのイナリの戦いだった。水魔法専門ではないが、魔法の精霊であるため、魔法の使い方がよくわかるらしい。本人曰く、魔力の通りが見えるらしいがタロウにはそれがわからない。そしてシェイドの専門魔法、闇魔法についてはこの世で一番知っているとも言っていいほどの腕だそう。闇魔法というものができてから、その魔法に宿った精霊がシェイドだという理由だそうだ。


「あ、終わったみたいだね。」


勝者は水魔法使いのセシールだ。闇魔法使いのイナリは最後の一発でやられたみたいだった。


『ったく、闇魔法のやつなんてただ手にある魔力だけ使って一方方向しか流さないなんて最近の学生は本っ当に雑魚だな。』


シェイドは踏ん反り返って感想を言っていたが、タロウから見たらイナリもこのクラスの中でそこそこ強い者だった。セシールもTp5入るくらいの強者のはずだが、シェイドの目にはただに雑魚にしか見えなかったらしい。だからなのか、シェイドの実力を一度だけでも見たいと思った。


休憩に入ると観客席の隣に犬と猫のような人が座ってきた。揺れているのは栗色のツインテールと大きなメロン、そして青みのかかったグレーの髪の毛だ。ココとベルが座ってきたのだ。二人はタロウに気づくと快く話しかけてくれた。



「あ〜、タロウくんだあ〜!!さっきはどうも〜、いや〜強かったねえ〜!!」


あはは〜と返しているココを横目にベルが猫の目を吊り上げながらタロウを見ていることに気づく。あはは〜、と返すとシェイドが先に口を突っ込んできた。


『そこの女、魔術の作り方は単純だが、魔力の流し方はそこらへんのやちらとは違うな。』


足を組みながら答えるシェイドはココに向けて言ったのではなく、ベルに向けて言っていた。ココは魔術の作り方がそこそこ上手いが、魔力の流し方が一方向だけだった、と言っていた。


「いや、きっとたまたまですよ〜……。アサ……、竜が来てくれたおかげだと思いますね。」


そう言うと突っかかるようにベルがタロウに言った。



「タロウ、たまたまココに勝ったっていうのはやめてくれる?それは貴方の実力が上だったっていうことを認めないで逃げるのと同じことよ。」


「あ、ご、ごめんなさい………。」



反射的に謝ってしまい、なんだがだんだんと不思議に思う気持ちがタロウには広がっていった。すると今度はココがなんだか申し訳なさそうに話し出した。


「ああ〜謝らなくていいよ〜。ごめんね〜、ベルは堅苦しいからねえ。タロウくんも私のことを思って言ってくれたんだよね〜。」


ココは苦笑いをしながら返すと、なんだかタロウもなんだか申し訳ない気持ちが広がっていった。



「休憩終了時間になったわよ。確か次は………私ね。よぢ、行ってくるわ。」


「行ってらっしゃ〜い!」



ベルはココに笑顔を返して、タロウには睨み見つけて、背中を見せながら急いで走って行った。対戦表を見ると次は白魔法、黒魔法、回復魔法使いのベル対土魔法使いのリアネか、雷魔法使いのヴィアンテだ。対戦表は試合場から離れた元の大きな対戦表に書かれていることを写せば同じなのだが、先ほどの戦いで移すことを忘れていたので、次の対戦相手がわかることができない。だが、それにシェイドが答えた。



『あの猫女の対戦相手は雷魔法使いの男だ。』


「なんでわかるの?なんか魔法でも使ったの?」


『ああ、ちょっとな。精霊にとっちゃあこんなことは朝飯前だよ。』


シェイドが鼻を鳴らしてそう答えた。そしてシェイドはココの横に向かって何か舌打ちした。


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楽器吹きは元最強竜騎兵の体に転生する〜以外と僕の顔は有名じゃないらしい〜 ぷー太郎 @puutarou1242

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