エピローグ

【異物、全て除去完了】


【肺、縫合完了。大動脈、出血停止】


【脊椎損傷、補強完了。続いて代替神経ネットワーク構築中】


 頭に響くのは、言葉ではない、意味だけのイメージ、響き渡る。


【安田ヒロシ】


 名を呼ばれる。


【お前には死なれては困る】


【我々にお前は必要としている】


【お前からは多くを学べる】


【人の在り方】


【人の壊し方】


【人の見分け方】


【人の殺し方】


【人の倒し方】


【人の支配の仕方】


【お前から多くを学びたい】


【それが我らの願望】


【それが我らの繁栄】


【それが我らの跪くただ一つの理由】


【それが我らの……】


 黙れ。


「ひゅご!」


 呼吸が、戻った。


 意識が覚醒する。


 口の中が血なまぐさい。


 胸が痛いのは敗北の痛みか、全身が血の汗でぐっしょり、股の間も濡れて、漏らしたか?


 それでも生きてはいる。多く失い、ホワイトスティンガーズが調子に乗っているが、生き残れたならまだやりようがある。


 まず今は移動だ。ここにいても始まらない。


 …………あ?


 足が、動かない?


【心臓は修復不可能】


【生存のため、脚部を流用した】


【脚部の筋肉を操作、圧縮収縮を行い、ポンプとしている】


【ゆえに通常の機能は】


 黙れ、と俺は命じたぞ。


 …………やっと内外が静寂となる。


 腕は、動く。


 延ばし、腿に触れると熱く、脈打っている。


 肌越しに伝わる血流の勢い、本当に心臓代わりらしい。


 それで、ならばと胸に手を当てれば、すっぽりと指が入った。


 首を曲げ、覗き米が穴が、曲がれる空気から貫通しているらしい。


 笑える、そしてイカス虚穴、またかっこよくなってしまった。


 体の確認終了、次は予定を立てる。


 やるべきこと、まずはここの脱出、適当な人間を食わせてスティンガーズを増やし、それからハーレムを確認、裏切ってたら全部殺す。


 それからそれから、たっぷりと復讐の準備に入ろう。


 やることは沢山、やれることはこれから確認、楽しい未来が待っている。


 おら、命令だ。モードを切り替えろ。


 肌の下を蠢き、ホワイトスティンガーズは速やかに命令を実行した。

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『アッシュワールド』安田 ヒロシ 負け犬アベンジャー @myoumu

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