母校でデート

小川貴央

第1話 母校でデート


「母校でデート」



爽やかな春日和、青空の広がる

清々しい朝のそよ風が心地よい。

長閑な田園風景が広がる母校の

裏庭で初恋の人と待ち合わせ。


二人は校舎のそばに流れている

小川に沿って歩き出した。

冬枯れた雑草もところどころに

茶色を遺していた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「なんか懐かしいね、何十年ぶりに

 来たけど」


「ええ、学校の周りも何も変わって

 ないわね」


「ねえ、この川の畔で鬼ごっこして

 走り廻ってたよね」


「あなた、足遅いから直ぐにアタシ

 追いついたわよ~」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~


学校の前に広がる田んぼに向かって

二人は歩き出した。

少し肌寒いけれど爽やかな春の風が

そよそよと渡っていた。


でも陽射しが眩しくて気温も上がり

肌寒かった風も段々にぬるくなって

心地良い春の息吹きが清々しく辺りに

立ち込めていた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「あっここ土が崩れてる、ちょっと

 待って、手をつなご」


「ありがとう、ハイヒールでなくて

 良かったわ」


「だって母校でデートだもん、ズック

 や運動靴の方がいいよ」


「そうね、懐かしい~、運動靴なんて」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~


田んぼの脇を流れる狭い水路に沿った

今にも崩れそうな細いあぜ道を二人は

歩いて行った。

チョロチョロチョロ~~~


~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「ほらあそこに小さなメダカが居るよ」


「ほんとだ、あの時も男子たちは写生を

 サボってザリガニ採りとかしてたでしょ、

 先生に見つかって怒られてたじゃない」


「うん、でも僕はちゃんと絵を描いてたよ」


「アタシだって、ふふふ」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~


水路を流れる水が陽射しを浴びてキラキラ

煌めきながらまるであの頃へと誘うかの

ように心地良く流れていた。

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 母校でデート 小川貴央 @nmikky

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