“好き”を再確信する瞬間。




 “付き合う”って、つまり“独占する”ってことでしょ?

 私とあなたは特別な関係で。

 だから、他の誰かに入る隙を与えない、ということを周囲へ喧伝するってことでしょ?

 なら、“付き合いたい”という感情は。

 “好き”という感情は、“あなたを私が独占したい”という感情とイコールで結ばれるはず。

 でも、私が誰かと付き合ったとき、私の“好き”は“束縛”に呼び名を変えて。

 そしていつも悪者扱い。

 私は何も変わっていないのに。

 あなたが特別だから、あなたの隣にいたい。

 それを誰にも邪魔されたくない。

 そう思っているだけなのに。


 あなたは、私に何を求めているの?

 特別な関係になったのに。

 付き合う前と何も変わらない日常が続くだけ。

 “彼女がいる”という優越感が欲しかっただけなの?

 ほんとは私のことなんて、好きじゃないんじゃ……?

 私はあなたのことがこんなに好きなのに。

 男の子とは一切話さないようにしてるのに。

 男の子の連絡先は全部消したのに。

 あなたの好きなものも嫌いなものも全部知っているのに。

 なんであなたは私のことだけを見てくれないの?

 私はあなたが女の子と話す度に胸が苦しくなるよ。

 あなたはそうじゃないの……?



 あぁ。

 そっか。

 分かった。

 私が気づいてなかったんだ。

 あなたにも思い出してもらえばいいんだ。

 “私と付き合いたい”と、“私を独占したい”と、そう思っていた頃の気持ちを。

 そう思っていた頃のあなたに。

 戻ってもらえばいいんだ。

 確かにそうだった。

 あなたは一度手に入れたらすぐに飽きちゃうもんね。

 あんなに欲しがってたゲームも、手に入れたらすぐに飽きてたもんね。

 待っててね。

 今すぐ“好き”を思い出させてあげるから。



 ―――――――――――――――――――――――――――――。

 ―――――――――――――――――。

 ―――――――。



 ほらね!

 やっぱりそうだった!

 あなたのあんな可愛い顔久しぶりに見た!

 わざと男の子と一緒に帰ってみたら不安そうな顔してた!

 私のこと好きだって思い出してくれたよね?

 私はそんな感情なくてもあなたを好きでい続けられるけど。

 あなたにはこれが一番いいんだね。

 “嫉妬”が一番のスパイスなんだね。

 ならこれからも定期的にあなたから離れてあげる。

 ほんとは私も嫌なんだよ?

 あなた以外の男に触れるなんて。

 あなた以外の男と話すなんて。

 あなた以外の男と同じ時を過ごすなんて。

 そんな汚いこと私が喜ぶはずないでしょ?

 でもこれであなたは私のことをいつでも忘れられないはず。

 私のことを常に考えて。

 嫉妬して。

 疑って。

 そうして私を好きだと再確信するの!

 そのためなら私はあの猿共とも話せる。

 なんでもできる。

 だってそうすればあなたは私を好きでいてくれるんだから!

 あぁ嬉しい!

 思わず顔がほころんじゃう。

 今日はあなたのあの顔を思い出しながら眠るからね。

 あなたも私を想いながら眠ってね。

 私のことだけを考えながら。


 大好きだよ。




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君想恋歌 raraka @ruri-bana

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