第2話 ルー
「·····どうしよう」
みるみるうちに地上が遠ざかっていく。双子のリーの姿ももう見つけることはできない。
-好奇心だった。ずっと近づいては行けないと言われていたお城。12回目の紅い月が来たらもう中は見ることが出来ない。だから、私がどうしても見たいとリーに頼み込んだのだ。
11回目の紅い月がでた夜、初めて城に入った。中は家具やドレスなど全て残されたままだった。最初は反対していたリーも城の中をみて目を輝かせた。口に出さなくても2人の気持ちは一緒だった。-ここを2人だけの秘密基地にしようって。
それから毎日大人に見つからないように城へ通った。おやつや缶詰などを少しずつ運んでは、綺麗なままのお部屋でお姫様と王子様ごっこをするのが毎日の楽しみだった。
12回目の紅い月が出る日、秘密基地がなくなってしまうのが嫌で、「早く帰ろう」というリーに駄々をこねて城からでようとしなかった。
痺れを切らしたリーざぴょんと地上に降り、「僕もう知らないからね!」といった瞬間だった。
ふわりと浮かぶ感覚によろけてその場にしゃがみ込んだ。状況を把握したのはリーが先。真っ青になった顔で私の名前を呼んだ。
リーの声に慌てて降りようとしたが、6歳の子供が降りられる高さでは到底なかった。
大きなリーの目に涙が溜まっていくのをぼんやりと眺めた。「もうだめだ、降りられない」何故か冷静にそう感じた。
いまだってそうだ、慌てる方が当たり前なのに立ち上がる気にもならない。あたりを見渡すと真っ白で何も見えなかった。ただ、城が登るのをやめたのだけは分かった。
あの青の向こう @hi_milk
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