あの青の向こう

@hi_milk

第1話 その城天空に舞い上がる

-xxxx年、リカルド王国ではある予言の日が近づいていた。その予言というのは、12回目の紅い月が出たその夜、リカルド城が天高く舞い上がり天空の空へ吸い込まれるだろうというような内容であった。ただのイタズラだと民は最初のうちは笑って過ごした。だが、少しずつ予兆のように城が浮かび上がっていたのだ。


11回目の紅い月が出た夜、誰の目にも明らかに城は空中に浮かんでいた。それは50センチ程のものであったが、理屈では説明出来ない程確実に空中に浮いていたのだ。そして民らは信じるに至った。城に近づくものはほぼいなくなっていた。天空に登ったら最後、地上に降りる手段などないのだから。



そして12回目の紅い月が出た夜、皆は天空に城が舞い上がる異様な光景を見守っていた。城にはだれもいない、ただ異質なこの光景を目にするのは二度とない軌跡ということで、まるで祭りのような騒ぎになっていた。


歌を歌い、踊り、酒を飲む。にぎやかな街に幼い子供の声が響いた。


「だれか!ルーが、ルーがまだ城にいるんだ!」


助けてと続く子供の目には大粒の涙が浮かんでいる。事の重大さに気づいた民は城へ目をやる。


ひとりの少女がたしかに皆の目に映った。だが、すでにもう人の届く高さに城はない。現在進行形でぐんぐんと空へ登っていく光景に大人達は目を伏せた。


「ルーを助けて!このままじゃ空に吸い込まれちゃう·····!だれか!!」


この街には空を飛ぶ乗り物は存在しない。つまり手も足も出ないのだ。ただ、絶望を浮かべ座り込む少女を下から見上げることしか出来ない。



「いやだ!ルー!ルーーーーーーー!!!」



幼子の悲痛な叫びと共に、城は天空へと吸い込まれて行った。



当時彼らはまだ6歳だった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る