2.卓上ライト

 ──以下はSさんの体験談である。


 私には妹がいました。死んでいるかどうかはわかりませんが、ある晩姿が見えなくなって、それっきり。


 妹は大学受験を控えていました。毎晩夜遅くまでテキストを多くこなしていて、私から見ても尋常ではない努力をしているように思えました。きっとこいつなら受験に受かるだろうなと思っていました。

 

 問題の日の前日のことです。家のすぐ近くで蚤の市が行われているということだったので妹と何か良さげなものがないか見に行きました。妹はフクロウの置物などを買っていました。暢気なものです。一方の私は、妹のデスクライトが壊れて使えなくなっていたことを思いだし、中古のデスクライトを買ってやりました。見た目は黒色で、女の子の部屋に置くには少しばかり似合わないようにも思いましたが、妹はそこまで気にしているようには見えませんでした。


  その日の晩に早速妹は買ったばかりのライトを使って勉強をしているようでした。私は疲れていたのですすぐ寝てしまったため、妹がどれ程勉強をしていたのかわかりませんでした。


 朝起きたら、妹の部屋に点いたままの卓上ライトがありました。私は妹と部屋を共有しているのでそういうものは全部見えてしまうのです。点けっぱなしなんてダメだなと思ったので消しておいてやろうなんて思ったのですが、先に起きていた母に急いで一階に降りてくるよう言われたので、そのまま降りてしまいました。部屋に戻ると妹がベッドで寝ていました。起こそうと思ったのですが起きる気配がありません。顔を見れば酷い隈ができていました。一体何時まで勉強していたのでしょう。


 妹が起きたのは正午を少し過ぎたくらいのころでした。妹はこんな変なことを言っていたのを憶えています。


 「太陽昇ってなかったから夜だと思ったんだけど、時計見たら8時くらいだったんだよね」


 どういうことだったのでしょう。その日は快晴でとてもとても天気が良かったと記憶しています。妹は、ちょっと疲れていたのかもしれません。その日の晩もまた妹は勉強していました。ただ、やたらと静かだったように思います。きっと寝落ちしているんだなと私は考え、特に気にせず寝てしまいました。そのときちゃんと気にして居さえいれば、妹がいなくなった経緯のヒントを掴めたかもしれないのに。


 翌朝、またしても卓上ライトが点いたままだったので、消しました。するとどこからかブツンという何かが切れるような音がしました。


 それ以来です。妹はどこかへと言ってしまったようで、今に至るまで姿を見せていません。警察による捜索はもう打ち切られているので、家族はみな絶望の淵へと叩きこまれた気持ちで日々を過ごしています。


 いつか妹の姿をまた見れることを祈って。

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現代怪奇 疲労コンパイン @frozen12590

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