当たりはしたが致命傷にならぬ状態をそう呼ぶ。
人間相手の、つまり戦争では半矢は有意義である。中途半端に負傷した人間は手当をせねばならず、その手当のために人手を割かねばならぬ。さらには、怪我をした人間を見て敵が士気を失うという利点もある。
だが野生動物にはそれは通用しない。中途半端に怪我をした野生動物は本気で怒り狂って誰彼構わず殺すなり食べるなり傷つけるなりしようとする。その意味で、本作での主人公が行っていることは、多分命中させてどうこうではなく銃を構え実際に玉のようなものが出るということを認識させて追い払う、いわば単なる脅しだろう。
恋においての半矢はなかなかに複雑だ。ある意味では戦争とも言えるし、またある意味では狩猟ともいえる。もちろん、まったくそれらとは関係ない人の営みともいって良い。というより、それを戦争だの狩猟だのに例える方が不適切かもしれない。
しかしながら、相談しに来た彼女にとってこれは戦争だ。頑張れともしとめろよともいえない。
なんとももどかしい。