わがまま
勝利だギューちゃん
第1話
明日は、わしと妻との記念すべき日だ。
結婚50周年、つまり金婚式になる。
既に巣立った子供たちや、孫が、お祝いしてくれるらしい。
なんだか、照れくさい。
明日に備えて寝る事にしよう。
「ねえ、あなた」
妻の声がする。
「起きてたのかい」
「ええ、緊張しましてね」
「お前でも、するのか・・・」
「あなたに、感化されてんですね」
妻とは高校時代からの、腐れ縁。
気がついたら結婚していて、喧嘩もしたが、
よく50年も、もったと思う。
「ねえ、あなた高校時代のころ、覚えてる?」
「ああ、覚えてとも」
「あなたとの、デートは野球観戦ばかりでしたね」
「他になかったからな」
動物園とかもあったが、ありきたりなので止めておいた。
今は、珍しくないが、わしらが若い頃は、デートで野球観戦。
珍しかった。
「なんて、いいましたっけ?あなたの好きなチーム」
「ああ、あそこは・・・」
今は亡きチーム名を、あげる。
「あの頃の球団は、殆ど変わりましたね」
「ああ、球場もなくなったな」
「時代の流れですね」
「ああ」
ふとさみしくなる。
「でも、あなたは変わりませんね」
「悪かったな」
「いえ、私の事を一途に愛し続けて下さって、嬉しいです」
「いや、少し変わった・・・」
妻が、驚いた顔を見せた。
「わしが、愛するようになったのは、お前から、お前を含めた家族になった」
「家族?」
「ああ、お前や子供たちを守るために、頑張ってきた。後悔はないよ」
「あなた・・・ありがとうです・・・」
妻が寄り添ってきた。
「明日は金婚式だ。早く寝よう」
「そうですね」
その夜は、久しぶりに夢を見た、
妻と初めてあった、あの頃の懐かしい夢を・・・
わしは今が幸せだ。
戻りたいとは思わない。
少しでも長く、妻と暮らしたい。
神様、それがわしの、わがままだ。
わがまま 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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