六、生きろ
「お前、よくわかってねーみてーだけど。お前は今、死にかけてんだよ」
「え……?」
「お前がクスリを大量に飲んだ夜。あの次の日、お前は自分のベッドで目覚めたんじゃねー。お前は目覚めなかったんだ。お前の職場の人間が仕事に来ないお前の部屋に確認しに来て、お前は病院に運ばれた。今、お前の体は病院のベッドの上で。お前の魂は
「え、……。……え?」
「人間の体は魂が何日も離れていると自然に死に向かっていく。お前の体の限界はもうすぐ来る。そうなったらお前は死ぬしかなくなる。魂の帰る場所がなくなっちまうんだからな」
「……」
「お前がこないだ生きる気になったと判断したから、俺は離れた。今度こそ生きて寿命までまっとうするんだろうってな。それがどうだ。お前はまだ体に戻っちゃいねー上に、その体の限界がすぐそこまで来てる」
「……」
「もう決めねーとダメだ。今すぐ体に戻るか、このまま
アキの紅い
「……、
「
「
「寿命まで生きて、そのあと
どっちにしても
「……、俺は。お前には寿命まで生きててほしいって思ってる」
「……、どうして?」
「どっちにしろ
アキはふいっと私のほうに向きなおった。
「俺は。お前に生きて、そんで人間らしーこといっぱいして。いつか
「……」
「そーやって
「……」
「寿命前に
「……」
「俺は。……、お前は泣いたりするより、能天気に笑ってるほうがあってる、と思う……、って人間相手に何言ってんだ、俺は」
アキはぐしゃぐしゃっと紫の髪をかきながら、とにかくだ、と続けた。
「生きてみろって。絶対、このままじゃ終わらねーから。絶対幸せだって感じること、あるからさ」
「でも……」
「何だよ」
「でも、それじゃあ、私。もう二度とあなたに会えないじゃない。生きてても死んでも。あなたに会えないじゃない。私、生きてても死んでもどっちでもいい。でもあなたに会えなくなるのは嫌だ」
「あのなぁ……」
「あなたにまた会いたい。会って話したりしたい」
「前も言ったろ……。死から遠くなった人間には、
「でも死んでもダメなんでしょ?」
「まぁ、な……」
「じゃあ、あなたに会いたくなったらどうしたらいいの? 呼んでも来てくれないんでしょ? 来てくれても私、分からないんでしょ?」
「……、仕方ねーだろ!」
声を荒げるアキと涙を流し始める私の間に気まずい空気が流れた。
私は人間、彼は死神。そもそも接点など何もないのだ。あるはずがなかったのだ。
それでも出会ってしまった。
出会い自体をなかったことになんかできはしない。
こんなとき、ドラマや映画だったら、カミサマってのが出てきて、どうにかしてくれるのに、あいにくとそこまでは都合よくできていないらしい。
「どっちにしろ」
もう決めなきゃいけない、とアキは言った。
生きるか死ぬか、の二択を。
私の愛しい死神様 くれない れん @kurenai-ren
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