五、お前どうすんの?

 アキが来なくなって数日が過ぎた。

 私の日常は変わりなく過ぎている。

 アキとの時間が無くなっても、不思議と死を意識することはなくなったが、生きる意味もなくしてしまったように思う。

 今の私は空っぽだ。

 ただ、呼吸をしているだけ。ただ食事をしているだけ。ただ義務を果たしているだけ。

 これって生きているって言えるのかな?



 その夜。

 私は夢を見た。

 夢の中でも私は自分の部屋のベッドの中でまどろんでいた。

 ベッドのスプリングがかすかにきしんだような気がして、そちらに視線を送る。

 そこにはアキが少し肩を落として座っていた。

「……、アキ?」

「ああ」

「どうしたの?」

「んー。ちょっとな。様子見にきた」

「私の?」

「他に誰かいんのかよ」

 アキの紅いが少しだけ悲しそうに濡れていた。

「どうしたの……? 悲しいの?」

「ん? あー……。そーかもな」

「何かあった?」

「お前さ」

 アキが悲しいのまま私の顔を見る。

「お前、何で動かないの?」

「え?」

「俺のメガネ違いってことはないと思うんだけど」

「アキ?」

「なー。お前、あの時生きていこうって思ってたんじゃねーの?」

「え、あ……。こないだのこと? うん、そうね。あの時はそう思ってたんだけど……」

 もう、気力なくなったかも。

 そういうとアキは「ふーん、そっか」と呟くと、その場に立ち上がった。

「もう、行くの?」

 アキはそれには答えずに私の顔をじっと見た。

「お前、どうする?」

「え、何が?」

「……、お前、このまま動かずにいる? それとも動く?」

「ねえ、何の話?」

 アキは小さくため息をつくと私をじっと見たまま口を開いた。



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