第2章 安岡寺おめめ作品が一部のファンたちに激ウケするのはなぜか 前編


<< 初めてのおめめ作品との遭遇は必然だった >>



私が安岡寺おめめの作品に初めて出会ったのは、彼女(当時は彼)が2018/08/17 15:23に新連載を開始した以下の作品が、『小説家になろう』の日刊コメディーランキング」に載っていたのを偶然見つけたからである。


その作品のタイトル及び、あらすじは以下の通りである。


―――――――― 作品タイトル ――――――――


『セクハラ大好きな伝説の魔女は男嫌いなので、性転換魔法で女だらけの楽園を目指す』


―――――――― あらすじ ――――――――――


わたしはユーリ。職業は魔女。先週、レベル999になった。


女神様「ユーリ。あなたはレベル999に達したので、一つだけ好きな魔法を習得することができます」

わたし「男の人を、一瞬で美少女にする魔法がいいです!」


わたしは男が大嫌い。

男なんて、ゴキブリと一緒。家があれば必ずゴキブリがいるように、町には必ず男の影がある。

あー、キモチワルイ!


だからわたしは、得意の範囲魔法で、世界中の男性をすべて美少女に変えることにした。

そして自由にセクハラしまくれる、百合の楽園を作るのだ!


わたし「女神様。今日は何色のパンツ履いていますか?」

女神様「覚えておきなさい、ユーリ。神々の下着は常に純白です」



この物語は変態魔女ユーリが美少女にセクハラするだけでは飽き足らず、男性まで魔法で美少女化して、さらにセクハラしまくろうという、百合セクハラ物語です。コメディタッチで書いていますが、やっていることはセクハラなので、そういうのが嫌いな方は注意してください。

――――――――――――――――――――――――


…………、願望丸出しっ!!!



◆◇◇◇◇◇◇◇



この作品のタイトルやあらすじへの言及は後で行うとして、まず私が彼女(当時は彼)のこの作品に『偶然出会ったことの意味』を考えていきたい。


先に述べるとこの出会いは偶然であり、必然でもあった。



◇◆◇◇◇◇◇◇



彼女の作品は基本的に『ランキングに長く載ることはない一方で、新作は必ずランキングに載る』


その理由は以下の通りと考えられる。


①彼女の作品はタイトル・あらすじの段階で後述の読者返しブラバ・トラップが徹底しているため、継続的な新規ファン獲得が難しいと考えられる。


このことによって彼女の作品は新規ポイントの獲得が必要となる「なろうのランキングシステム」とは相性が良くなく、そこに長く居続けることはできないのだ。


②一方で、彼女の特徴的な作風を熱狂的に支持する固定ファンが一定数存在するため、新作は必ずランキングに載る。


つまり、一瞬だけではあるが確実に世間の注目が集まる場所に浮上していくるタイミングがあるのだ。


よって、私がこの『セクハラ大好きな〜』に出会ったのは偶然であり、必然でもあるといえる。


それはまるで息継ぎのために海面に浮上していくるクジラのようだ。


なので、彼女の作品との遭遇エンカウントは時期さえ合えばほぼ確実で、逆に時期を外せばほぼ遭遇エンカウントすることはないのだ。



――――――――――――――――――――――――



<< 安岡寺おめめ作品が私にとってもの凄く面白く感じるのはなぜか >>



おめめ作品に偶然遭遇エンカウントしてしまった私であるが、すぐにおめめ作品のファンとなってしまった。


そうなのである。おめめ作品は『なぜか私にとって凄く面白く感じた』のである。


『セクハラ大好きな〜』はタイトルやあらすじからも分かる通り、あまりにも作者自身の願望丸出しな作品であり、一般大衆受けすることを狙った作品ではないことは明らかである。


正直私も『セクハラ大好きな伝説の魔女が"男が嫌い"という理由だけで、広範囲性転換魔法を使って、自分の領地である島に住む男性を全員、女性に性転換する』というストーリーには理解しがたいと思うところもある。



◇◇◆◇◇◇◇◇



しかし読んでみて思ったのだが、この作品はストーリー展開がどうであれ、面白いのだ。


いや、単に面白いというより、読んでいて『爽快そうかい』なのだ。


これは一体なぜだろうか?



◇◇◇◆◇◇◇◇



その理由を考察してみたところ、一つ思い当たったことがある。


安岡寺おめめ作品は『読者に対して』となっていたのだ。


要するに『』なのだ。



◇◇◇◇◆◇◇◇



<< おめめ作品の特徴である『とても読みやすい構造』 >>



安岡寺おめめの作風は以下の意味で『とても読みやすい』という特徴を備えている。


① ストーリー構造の明快さ


② 電子での読みやすさを重視した『十分に取られた行間』


③ 共通認識を利用した『キャラクターの特徴付けの上手さ』



◇◇◇◇◇◆◇◇



安岡寺おめめ作品においては「〜〜だから〜〜する」という一貫性のあるストーリー構造が徹底している。


彼女の代表作である『魔界放送協会(MHK)〜』を例にとってみよう


大目標『異世界で世界一のテレビマンとして活躍する』

     ↓

でも異世界にはテレビがなかった

     ↓

だからテレビを作る

     ↓

テレビを作って販売したが、肝心の番組が面白くなかったので大量返品を食らう

     ↓

なら面白い番組を作ろう

     ↓


と言ったように、あらかじめ「大目標」を明示した上で、それを実現するための工程を順番に行って行っている。


一般のネット小説においても、このような大目標の設定から、短期目標・長期目標という形をとる作品は普通にあるが、おめめ作品ではそれが徹底していているのだ。


このことによって読者は、圧倒的にストーリーが理解しやすく、またそれが読みやすさにつながっているのだ。


ではなぜこの様なことが可能であるのであるのかについて、具体的な理由を考察してみたい。



◇◇◇◇◇◇◆◇



多くのネット小説、特になろう作品において主人公は自由な存在だ。自分で行くところを決めるし、したいことをする。よって自由に動かざるをえない。


要するに「思いつきで動ける余地が多すぎるため、思いつきで動いてしまう」のだ。


しかし、おめめ作品における主人公達は決して自由な存在ではない。



◇◇◇◇◇◇◇◆



『魔界放送協会(MHK)〜』の主人公であるケンゾーが新人MHK職員であり、上司や先輩に気を使わなければならない様に、


『セクハラ大好きな〜』の主人公であるレベル999の伝説の魔女であるユーリが、借金でがんじがらめにされている様に、


おめめ作品において主人公は、ストーリー側からかせをはめられているのだ。よってその動きはある程度制限されたものとならざるを得ない。


このことによって「〜〜だから〜〜する」の図式を崩すことなく、順々にストーリー進めていくことを可能としているのだ。



――――――――――――――――――――――――



<<ここまでのまとめ>>



① おめめ作品の主人公はストーリー側からの制約を受けている。


② そのため「〜〜だから〜〜する」の構図を崩さずにストーリーを展開させることができている。


③ 「〜〜だから〜〜する」という構造は読者にとって非常に理解しやすく、それが読みやすさにつながっている。



<< 中編に続く >>

――――――――――――――――――――――――

引用元:

『セクハラ大好きな伝説の魔女は男嫌いなので、性転換魔法で女だらけの楽園を目指す』

https://ncode.syosetu.com/n3674ey/


作者の許諾を得て引用。

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