第3章 安岡寺おめめ作品が世間的に評価されていないのはなぜか 前編


第3章 なぜ安岡寺おめめ作品は世間的に評価されていないのか

    ータイトル・あらすじに含まれる品のないワードの読者避け効果

    ー作品内容とユーザー層とのミスマッチ



前話では安岡寺おめめ氏の作品は、一般世間から評価されていないが、ウケる者には絶対ウケる稀な作風である理由として『暴力表現を用いた社会風刺』という観点から取り上げました。


要するにおめめ作品の面白さを読み解くためには高い知識レベルが必要となり、それを持たずにおめめ作品を読んでもただ理不尽な暴力が描かれているだけで不愉快にしか感じないだろう。ということを論じました。


今回はさらに『なぜ安岡寺おめめ作品は世間的に評価されていないのか』について深く論じていきたいと思います。


――――――――――――――――――――――――



おめめ作品は『徹底的に読みやすさのこだわった構造』となっており、また『風刺表現を用いた知的な面白さ』を含んでいるため、それが分かる者にとっては最高に面白いということがわかった。


一方でおめめ作品における『暴力を用いた風刺表現』は『読者に高い知識レベルを要求する』ため、それを容易に読み解くことはできず、この点こそが安岡寺おめめ作品が世間に評価されていない理由であると考えられた。



◆◇◇◇◇◇◇◇◇



しかし上記の説明だけでは、不十分である。


なぜなら、おめめ作品の風刺を読み解き、その面白さを理解できる潜在性を持つ読者はもっと数多く存在するはずだからである。


高い知識レベルが必要と言ってもニュースアプリやツイッター、Yahooニュースなどで日々主要な社会問題を知っておけば十分に対応できるレベルなのであるからだ。



◇◆◇◇◇◇◇◇◇



そこで私はもう一度、彼女の作品群を考察してみた。すると興味深い点を発見した。


おそらく彼女の作品はタイトルやあらすじに「」が多数含まれおり、このことが最上級の読者避けブラバ・トラップ効果を発動していることが原因なのではないだろうか。



◇◇◆◇◇◇◇◇◇



<<タイトル・あらすじに含まれる品のないワードの読者避け効果>>


『品のないワード』とは一体何か。


要するに読者に『不快さ』を引き起こす単語のことである。これを『マイナスワード』という人もいる。


以下ではあえて「品のない」と表現するが、要するに「」ということである。



ここでは彼女の作品のタイトル・あらすじを例にそれらがどの様に用いられているかを読み解いてみる。


なお■で囲んだ部分が明らかな「品のないワード」と考えられる単語、◆がギリ微妙な単語である。



―――――――― 作品タイトル ――――――――


魔界放送協会(MHK)の職員(人間界担当)になったけど、人間界にはテレビがなかった


―――――――― あらすじ ――――――――――


ケンゾーは異世界に転生し、MHK(魔界放送協会)の職員として採用された。

だが、異世界にはテレビなんて存在していなかった!


同僚は◆暴力◆と◆恫喝◆で金を奪い取ることしか知らない短気なダークエルフ、頭はいいがヒキコモリの怠惰な魔女、それに年に数回しか地上に降りてこない傲慢なパルピュイアと、ややこしい奴揃い。


サキュバス上司は今日もぶっ壊れて■小便■を垂れ流す。


ダークエルフ「ゼロ人や、ゼロ人。この人間界でテレビを持っている奴はおらんで」

サキュバス上司「そんな、受信料集めてたじゃないですか……」

ダークエルフ「ごめんな。あれはただの強盗だったみたい」

サキュバス上司「ええー……」


果たしてケンゾーは、今生こそは世界一のテレビマンになれるのか?


――――――――――――――――――――――――



彼女の代表作である『魔界放送協会(MHK)〜』では『小便』という表現が特徴的である。そしてその前後の『ぶっ壊れて』『垂れ流す』がさらにそれを強化している。


なぜ彼女がこのような表現を行っているのだろうか。しかしこれまでの考察で明らかとなった通り、彼女はものすごいハイスペックな切れ者であるため、このことには絶対にがあるはずだ。



◇◇◇◆◇◇◇◇◇



別の作品を見てみよう。


―――――――― 作品タイトル ――――――――


◆セクハラ◆大好きな伝説の魔女は男嫌いなので、性転換魔法で女だらけの楽園を目指す


―――――――― あらすじ ――――――――――


わたしはユーリ。職業は魔女。先週、レベル999になった。


女神様「ユーリ。あなたはレベル999に達したので、一つだけ好きな魔法を習得することができます」

わたし「男の人を、一瞬で美少女にする魔法がいいです!」


わたしは男が◆大嫌い◆。

男なんて、■ゴキブリ■と一緒。家があれば必ず■ゴキブリ■がいるように、町には必ず男の影がある。

あー、◆キモチワルイ!◆


だからわたしは、得意の範囲魔法で、世界中の男性をすべて美少女に変えることにした。

そして自由に◆セクハラ◆しまくれる、百合の楽園を作るのだ!


わたし「女神様。今日は何色のパンツ履いていますか?」

女神様「覚えておきなさい、ユーリ。神々の下着は常に純白です」



この物語は変態魔女ユーリが美少女に◆セクハラ◆するだけでは飽き足らず、男性まで魔法で美少女化して、さらに◆セクハラ◆しまくろうという、百合◆セクハラ◆物語です。コメディタッチで書いていますが、やっていることは◆セクハラ◆なので、そういうのが嫌いな方は注意してください。


――――――――――――――――――――――――



ここで特徴的なのは『ゴキブリ』という誰にとっても不快さを呼び起こす強力ワードを使っていることである。


しかも『大嫌い』『キモチワルイ』と合わせて使うことによって、そう言われた側の男性読者をふるいにかけている言って良いだろう。


またこの作品のキーワードである『セクハラ』は99%の女性にとって不快ワードであることは容易に想定できるため、これらをあえて使っていることには必ずがあるはずだ。



◇◇◇◇◆◇◇◇◇



さらに別の作品も見てみよう。


―――――――― 作品タイトル ――――――――


床下に住み着いた死者の王(美少女)がウザすぎる


―――――――― あらすじ ――――――――――


平凡な中学生、比良坂太一が帰宅すると、部屋からとんでもない■悪臭■が。

床下をめくってみると、中から死者の王を名乗る◆腐った◆美少女が現れた。


「お、おおお、おまえ! 誰なんだよ!」

「わーはヨミ。死者の王。ししし!」


しかもそいつは太一の薄い本の隠し場所(床下)を知っていて、なんだかわからないが太一を性的に誘惑して来るのである。


「わーの身体、好きにしたいんじゃないのか? しししし……!」


床下にゾンビ美少女が住み着くバディ物コメディです。

――――――――――――――――――――――――


この作品の場合、ヒロインはゾンビ美少女であるため、ゾンビモノ愛好者には『悪臭』『腐った』という品のないワードはと考える向きもある。


しかしこの作品はコメディージャンルに投稿されており、普通一般の読者をターゲットとしていると思われる。


やはりだ……


一体なぜなんだ、安岡寺おめめ???



なお彼女の投稿作品のうち最も世間の注目を集め、ポイント評価も高かった以下の作品をみてみよう。


―――――――― 作品タイトル ――――――――


四天王最弱の俺が、実は勇者と付き合ってる


―――――――― あらすじ ――――――――――


四天王最弱男と女勇者がこっそり遠距離恋愛する、王道ラブコメです。



魔王に仕える四天王の一人アンテノールは、空間転移魔法が使える以外は平凡な魔導師で、史上最弱の四天王として部下からもバカにされている。それがひょんなことから、世界最強だがやる気ゼロの女勇者と付き合うことになってしまい……。


果たして敵同士の二人は、種族と距離の壁を乗り越えて、結ばれることができるのか!?


――――――――――――――――――――――――


一切、品のないワードが含まれていない!


『バカ』を品のないワードとするかどうかはもしかしてグレーかもしれないが、それ以外は全く品のないワードが含まれていないのだ!


なんで???



◇◇◇◇◇◆◇◇◇



考察に入る前に品のないワードをどうしても使いたい場合の方法を一応ご説明しておこう。


意図的に使っているおめめ氏は別として一般作者さんにはご参考になるかもしれない。


それは『品のないワード』使う方法、それは『別の言葉への置き換え』である。



◇◇◇◇◇◇◆◇◇



例えば『大嫌い』という単語に対しては『好きじゃない』または『どうしても好きになれない』などが考えれる。


どうしても『大嫌い』であることを表現したい場合は『だいきらい』『大キライ』などカタカナやひらがなに置き換えることも有用である。


要するに書き方を工夫することでそれを見た時の読者の精神的ショックを減らすのだ。


同様に『悪臭』については『良くないにおい』『ひどいにおい』などが考えられるだろう。


『ゴキブリ』の様な名詞については『黒い虫』『くろい虫』『黒いムシ』『くろいアレ』なども検討可能であろう。『●』という風な記号的な表現に置き換えることも可能かもしれない。



◇◇◇◇◇◇◇◆◇



しかし、私は思う。


安岡寺おめめは品のないワードがもたらすであろう読者返しブラバ・トラップ効果をもちろん知っていて、使のではないかと。


なぜなら、あれほど知的な風刺に富んだ文章を書き、果てはアプリ開発までこなしてしまうハイスペック作者が気がつきもせずに品のないワードを使っているはずがないのだ。


だから、安岡寺おめめは絶対にあえて品のないワードを使っているはずだ。


しかしそれは一体なぜなんだろうか?



◇◇◇◇◇◇◇◇◆



考察を進めるうちにたどり着いた一つの答え。


それは彼女が世間的な注目を集め、自身最高の評価ポイント・ブックマークを得たのにも関わらず投稿1ヶ月でエタらせた作品の中にあるのではないだろうか、ということに。



<< 続く >>


――――――――――――――――――――――――


引用元:

『魔界放送協会(MHK)の職員(人間界担当)になったけど、人間界にはテレビがなかった』

https://ncode.syosetu.com/n6415ex/


『セクハラ大好きな伝説の魔女は男嫌いなので、性転換魔法で女だらけの楽園を目指す』

https://ncode.syosetu.com/n3674ey/


『床下に住み着いた死者の王(美少女)がウザすぎる』

https://ncode.syosetu.com/n8475ff/


『四天王最弱の俺が、実は勇者と付き合ってる』

https://ncode.syosetu.com/n3180ez/


作者の許諾を得て引用。

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