月の光〜ベルガマスク組曲より〜

井伊玄斗

仮面の舞踏会

月の光に照らされ人々は舞う。

今宵は満月。

フランス・ヴェルサイユに位置するベルサイユ宮殿では仮面を被った男達がドレスを身にまとった女達と共に舞っている。

仮面を被った男達は誰が誰だかわからない。だが、1つ言えるのは著名な政治家などのいわゆる富裕層であること。ここは富裕層の社交場なのだ。舞い。犯し。貢ぎ。殺す。

俺はここでボーイとして働いている。なぜか。給料がいいから。

どうやって。俺は極道の下っ端だ。


女の顔はいい。胸もある。中には女優もいる。そういった女優も犯されている。もう中毒になっているのだろう。


男が女を誘い。同意のもと個室に入り男女のひと時を過ごす。男同士で入っていく奴もいる。大体は闇取引だ。

大麻、コカイン、拳銃も。

ここは闇のサロンだ。


ボーイの俺はシャンパンやクラッカーを運ぶ。シャンパンも庶民が口にできるようなものではない。まぁ会員費が高いから当然だろう。しかし、男も女も喜んで支払う。なぜか。人間は一度変わると元には戻らない。

それを俺は父親で思い知った。


残酷なこの世界で俺の父親は殺された。このベルサイユ宮殿で。

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