僕の魂は重くない。



 どこかで聞いたことがある。

 “魂には重さがある”。

 そんな話を。

 僕にもあるのだろうか。

 この身体のどこかに。

 “魂”が。



 もしあるのなら。

 僕の魂にも“重み”はあるのだろうか。

 あの有名人の魂と同じ重みが。

 あのサラリーマンの魂と同じ重みが。

 あの子供たちの魂と同じ重みが。

 僕の周りで日々を一生懸命生きている人々と同じ重みが、僕の魂にもあるのだろうか。



 そうだとしたら、少し安心する。

 でも、少し申し訳ない気もする。

 だって僕は何も成していないから。

 僕の魂と彼らの魂の重みが同じだなんて、それじゃまるで人生に意味がないみたいだ。


 

 ――――――いや。

 意味なんてないのかもしれない。

 僕たちの人生には意味なんてなくて。

 価値なんてなくて。

 何を成そうが関係なくて。



 ――――ひょっとしたら。

 僕の人生は夢と同じなのかもしれない。

 僕の人生は、夢や幻で見たひと時と価値なんて変わらないのかも。



 あぁ。

 そう考えれば納得がいく。

 僕の人生は僕のためのものなんだ。

 「君の人生の主人公は君自身だ」って言葉は、全然大げさじゃないんだ。

 だって、僕たちが何をしても“魂の重さ”は同じなのだから。

 僕が、僕自身の魂に“重み”を感じることができるかどうか。

 それが全てなんだ。



 今はまだ、僕の魂から重みを感じることはできない。

 この胸の中に閉じ込めていないと、ふわふわと空へ舞ってしまうような。

 そんな魂だ。



 いつか、感じることができる日が来るのだろうか。

 僕の魂の“重み”を。

 こんななにもない僕も、彼らと同じ魂を胸に灯しているのだと。

 僕の胸の中にある魂は、こんなにも重みを孕んでいるのだと。

 そう誇れる日が、来るのだろうか。


 今はまだ、その兆しはないけれど。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

零れ落ちる濁流。 raraka @ruri-bana

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ