第二話 愛里亞の世界
「ママ、今空港に着いたわ。……ううん、大丈夫。電車で帰る。心配しないで」
数多の人々が行き交う国際空港。
ラウンジのソファーにゆったりと腰を掛けながら、少女はスマートフォンを耳に傾ける。
美しい少女だった。
歳の頃は十代後半か。
微かに波打つ栗色の長い髪、赤みを帯びた瞳、色白のその美貌は西洋絵画の聖母を彷彿させ、偶々すれ違う男性達は皆少女に魅入られずにはいられない。
それに加え。
他の女性とは違う、男を惹きつける"
その少女。名を、
「ええ、フランスの同胞達のお話はとっても勉強になったわ。出された
不意に愛里亞は表情を険しくして周囲を見渡すと、スマートフォンに唇を当て、囁くように話す。
「ママ…悪いニュースよ。とうとうヴァチカンの強硬派が手練れの
…………。
……。
暫く黙り込む少女。
「…嫌よ…!そんなの…っ!」
突如、愛里亞の美しい顔は怒りの形相となり、周囲に気取られないよう静かに吠える。
「私は私の力で強くなるの…!あの子の精気は必要ない…!あの子は…楓斗は他の男どもと違って餌じゃない…!ママはあの子を精気目的で引き取ったの…!?違うでしょ…!?」
愛里亞は態とらしい溜息を一つ。
「…ごめんなさい。長旅で疲れて…ちょっと気が立ってるだけ。うん…、うん…、じゃ…、ママは強いから大丈夫だと思うけど……妹達には暫く
そして、愛里亞はスマートフォンの通話機能を切る。
画面を独占していた『通話中』の文字は消え、代わりに映し出されたのは。
大きな魚を持って驚いた顔をした少年と、その隣で笑う、愛里亞本人の写真。
スマートフォンの待ち受け画面に設定してある写真を指先でなぞりながら、
(楓斗…私…ぜったい貴方を
愛里亞は愛用のルイヴィトンのキャリーバックを杖代わりにして立ち上がる。
豊満ながらも整った形の美乳がゆさりと揺れた。
(そんな事までして、
愛里亞は齢十七になった今でも鮮明に覚えている。
十年前、養護施設から、あの薄ら寒く見える建物から
自分の手を握る、あの幼い男児の手の温もりを。
(楓斗は私の
ロビーの天窓から、陽の光が愛里亞へと降り注ぐ。
愛里亞のその身体は他の人間と何ら変わりは無いというのに。
影の背中には蝙蝠の様な翅が。
影の尻には先端がスペード状になった細長い尻尾が生えていた。
続く
きゅーせい・ふぁみりー 〜俺は姉さん達の非常食?〜 比良坂 @toki-315
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