魔法剣士というロマンに挑む大作

骨太なテーマと鮮烈なキャラクターが魅力的な今作だが、その辺りについては既に諸兄姉のレビューに詳しいので、ここでは割愛したい。

個人的に他に注目しているのは「魔法剣士」というロマンあふれるモチーフに果敢に挑んでいる点だ。

ファンタジー世界を舞台にしているのであれば、アクションに魔法を登場させたくなるのが人情というものだが、一方で剣劇というのも捨てがたい魅力をもった要素である。だが、それを両立させながら主人公を描いていくのが大変な作業であることは想像に難くないし、実際に見事に魔法剣士ヒーローを描ききった作品には中々お目にかかれない。時代小説とファンタジー小説を愛読し、黎明期からネット小説を乱読してきた身からしても、成功例と思えた作品は片手で数えられるほどだ。

この作品の活劇シーンはどれも息を飲むほどの迫力で描かれているが、その中で魔法と剣の二要素がバランスよく配置されている。(ただし、あくまでも主眼に置かれているのは今のところ剣であり、魔法は副の色合いが濃い)

技の解説や説明はクドくなくテンポのいいもので、それでいて描写の凄みは些かも衰えていない。また、剣と魔法を扱える主人公が強大な存在となりすぎて陳腐化する展開にもなっておらず、かといって遅々として成長や活躍をしない退屈な筋書きでもない。総じて、しっかりと練られたアクション場面が続く。

今作は連載中であり、これから主人公がどういった足跡を辿っていくのかはまだ分からないが、現時点で既に読み応えのある「魔法剣士」モノとなっており自信をもって推薦できる。もしも、あなたが剣技や魔法が飛び交う重厚なアクションファンタジーを読みたいと考えているならば、是非この作品を手にとってみて欲しい。