人は皆、獣なんだぜ・・・

 『獣の見た夢』という儚げなタイトルに惹かれました。期待は裏切られませんでした。
 魅力的な登場人物に飽きの来ない展開、緊張感のある戦闘で、退屈とは無縁の物語です。主要な登場人物の多くが、決して清らかなだけでない願望・欲望を抱き、苦悩しぶつかり合い、そこで生まれる激情がストーリーを鮮烈に彩ります。敵の荒い息遣いが聞こえてきそうなリアリティある戦闘シーンは、どれも一筋縄ではいかず、相手の防具や戦闘スタイルを加味しての行動は説得力があり、世界観をより重厚なものとしています。
 物語は主人公アベルの幼年期からの成長とともにじっくり進み、彼の人生を追体験しているようです。幼馴染との出会い、イースとの出会い、数々の体験冒険苦難達成成長…。アベルの瞳の奥の昏い光は貴人すら魅了し、また数奇な運命を引き寄せます。
 果てしない闘争の先に、アベルの渇きは満たされるのでしょうか、そもそも闘争ではない他の何かこそ彼の心を満たすのでしょうか。これほどまでに結末が気になる作品はありません。ここにレビュー書くためにカクヨム会員登録しました。オススメです。

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獣の見た夢

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